劇場公開日 1947年7月

「長い長い心の旅路の果てのラストに、涙」心の旅路 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0長い長い心の旅路の果てのラストに、涙

2021年3月8日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、DVD/BD

「哀愁」に引き続いて、
マーヴィン・ルロイ監督作品として再鑑賞。

今回は、彼女が彼の秘書として登場する驚き
が無い分だけ冷静に観れた気がした。

この映画の最大の欠点は導入部だ。
元々彼が持っていた魅力と言わんばかりで、
何故、彼女は彼を見そめたのか、
また、彼女が彼を安全な地に導くため
とはいえ、
いとも簡単にメインキャストとも思える
踊り子としての仕事を放棄出来たのか、
との説明が不充分なため、
冒頭で作品の世界に入りにくいことだろう。

更にその後の展開でも、
冒頭の精神病院の担当医が、
何故彼女の傍にいるかも説明されない
ままだ。

そして、
善人に囲まれて、ラストシーンを描くために
都合良く進むストーリー展開は、
ルロイ監督に共通していて
「哀愁」とも同じだ。

彼を愛する姪が彼の心の奥底を見抜いて
自ら身を引くのも、
彼の担当医が
自らの気持ちを押し殺したまま
彼女の彼への愛情に理解を示すのも、
出来過ぎていて、リアリティに欠けた前提
と言わざるを得ない。

しかし、それでも感動を覚えるのは、
身分を明かさないで自分を思い出すまでと
耐えて耐えて接する彼女と、
失われた記憶に違和感を覚え続ける彼の心象
に絞って、丁寧に描き込む監督の製作姿勢
なのかも知れない。
こういった徹底した主人公の思索描写の作品
を近年は見かけないような気もする。

「哀愁」の悲劇性に比べ、
ハッピーエンドのこの作品の方が後味の良さ
はあるが、何かと説明不足感がある分、
「哀愁」の方が映画としての完成度が高い
印象を受けた。

KENZO一級建築士事務所
Gustavさんのコメント
2021年9月6日

KENZO一級建築士事務所さんへ
指摘されている、「徹底した思索描写」は当時の分かり易い表現として一般的だったと思います。美男美女の喜怒哀楽が広く観客に伝わりました。今はより自然な演技で共感を得るのを良しとする作風が多くなりました。時代時代で演出や演技の楽しみ方が変化しているのも面白いですね。

Gustav