劇場公開日 1962年5月22日

荒野のガンマンのレビュー・感想・評価

全9件を表示

3.0最期の西部劇監督ペキンパーのデビュー作は、極めてオーソドックスな小品だった

2025年10月30日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

テレビ映画で西部劇を撮っていたサム・ペキンパーが、興行主たちの推薦を受けて監督したという劇場用デビュー作。
NHK BSの放送にて。

南北戦争終結間もない時代設定なので、『風と共に去りぬ』や『ダンス・ウィズ・ウルブズ』と近い時代を描いていることになるが、本作は開拓時代と変わらない印象。アメリカは広いので同じ内戦後でも地域によって様々な様相を呈していたということ。

元北軍将校のイエローレッグは、自分の頭の皮を剥ごうとした元南軍兵士を復讐のために探していた。彼は戦争で受けた銃弾がまだ肩に埋まっていて右腕がうまく使えず、満足に拳銃を扱えない。
演じるブライアン・キースは、ペキンパーが演出したテレビ西部劇にも出演していたらしく、テレビが主戦場の俳優だったようだが、ショーン・コネリー主演の『メテオ』(’79)でソ連の科学者を全編ロシア語で演じていた。唯一しゃべった英語(だったと思う)が「くたばれ、ドジャース」(笑)

とある町のダンスホールで働く女キットは、幼い一人息子を抱え、町の女たちからアバズレと揶揄される存在だった。その息子も町の子供たちから敬遠され、一人でハーモニカを吹いて過ごしていた。
キットを演じるモーリン・オハラは、ジョン・ウェインとの共演作など西部劇に多数出演してる女優で、本作の一枚看板スターである。

邦題のイメージとは若干乖離する気がするが、自身の復讐を果たそうとする男が、女性を愛したことで気持ちが揺らぐという、本作はラブ・ストーリーなのだ。
原題「The Deadly Companions」(命がけの道連れ…かな?)は、イエローレッグが仇敵として命を狙っている男ターク(チル・ウィルス)とその相棒ビリー(スティーヴ・コクラン)と行動を共にしながら、復讐の機会を待つというシチュエーションを表している。

いかさまポーカーで吊るし首にされようとしていたタークを偶然見たイエローレッグは、彼が何やら因縁のある男だと気づいて助け出そうとするのだが、多勢に無勢で苦戦する。そこにタークの相棒らしきビリーが現れて加勢し、三人で脱出する。
タークは飲んだくれで、妄想癖がある老いぼれだ。若い相棒ビリーのことを自分の弟子のように言うが、ビリーの方はそれを鬱陶しく思ってるようだった。
イエローレッグがある町の銀行に大金が預けられていると二人に強盗を持ちかけ、三人はその町に向かう。ここまで三人の間で交わされる会話は二言三言で、唐突な展開に思えるのだが、そこにリアリティや説得力を持たせる気はサラサラない。
その道中でも三人がうちとけた様子はない。
そして、三人はその町でキット母子と出会うのだ。

先に他の強盗団が銀行を襲ったので、三人はそいつ等と撃ち合いをする羽目になる。そこでイエローレッグの撃った弾がキットの息子に当たってしまい、少年は命を落とす。
映画の序盤で、これがなかなか衝撃の展開なのだ。
なんなら、『シェーン』(’53)のようにイエローレッグと少年の交流が物語の軸になるかと思わせる雰囲気を出していたのだから…。

息子の遺体を馬車に乗せ亡夫の墓がある町へ埋葬に行くというキットは、道中の護衛をするというイエローレッグの申し出を断って一人で出発する。イエローレッグはタークとビリーを従えてキットのあとを追う。
こうして四人の珍道中が始まるのだが、この展開もよく分からない。
タークとビリーはなぜイエローレッグに従うのか。
タークはイエローレッグをあまり気に入っていないようだが、ビリーは一目置いているようにも見え、ぶつぶつ言い合いながら二人はイエローレッグについて行く。
タークを助けてもらった義理か、イエローレッグがいないと銀行を襲えない何かがあるのか(そんなものはないことが後で分かるが)…。

ところが、最初からキットに色目を使っていたビリーが彼女に手を出したことでチームは分裂。イエローレッグはビリーを丸腰にして追放する。その後タークはビリーの後を追う。
イエローレッグとキットは二人だけで目的地を目指すこことになるのだ。
途中でインディアン(というのは今は差別用語で「先住民」と言わねばならない。よく聞き取れなかったが、原語ではアパッチと言っていたのではないか)との抗争もあり、二人の間に微妙な空気が生まれる。
やがて目的の町に着くが、そこはゴースト・タウンで教会の墓地は荒れ果てていた。

銀行強盗を成し遂げたビリーとタークがそこにやって来て、いよいよ西部劇らしいクライマックスに突入する。
イエローレッグとタークの撃ち合いを見たビリーが「かすりもしないのか」と呆れるほどで、派手なガンファイトが展開するわけではない。だから邦題の〝ガンマン〟が浮いた感じがするのだ。
信仰に厚いキットは、たとえ恨む相手でもタークを殺そうとするイエローレッグを制止するのだった。
いつしか、キットとイエローレッグの間には心が通っていた。

ブライアン・キースにそれほど魅力を感じない分、モーリン・オハラの華が際立っている。

最期の西部劇監督と評されたサム・ペキンパーのデビュー作は、メジャースタジオ製の大作には遠く及ばない小品ではあるものの、西部劇に欠かせない「良心」をキチンと押さえた王道だった。
後に撮ったバイオレンス西部劇で、往年の西部劇ファンを落胆させ、シネフィルからは高評価引き出すことになるなど、想像もされなかっただろう。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
kazz

3.5バイオレンス要素も薄めで、ラブストーリー要素が強め。但し、話のテンポの良さは片鱗をのぞかせていますね。

2025年5月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

幸せ

シネマヴェーラ渋谷さんにて『超西部劇』と題した戦後に新たな要素を取り込んだ西部劇の特集上映開催中(2025/05/03~05/30)。本日はバイオレンスアクション映画の巨匠サム・ペキンパー監督の長編デビュー『荒野のガンマン』(1961年)を鑑賞。

『荒野のガンマン』(1961年/93分)
『ワイルドバンチ』(1969)、『砂漠の流れ者』(1970)、『わらの犬』(1971)、『ゲッタウェイ』(1972)、『戦争のはらわた』(1977)などバイオレンスなアクション映画の傑作を世に出したサム・ペキンバー監督が企画・制作・脚本・演出を務めた長編デビュー作。

南北戦争で南軍兵の男に頭の皮をはがされかけた元北軍兵の復讐と、彼が撃った流れ弾のために亡くなった息子の亡骸を亡き夫の隣に埋葬するため、先住民たちの襲撃の危険を顧みず毅然と墓に向かう未亡人の愛憎の念が入り混じるロードムービー。

監督がこよなく愛する滅びゆく西部の男たちへの哀愁はデビュー作の本作でも描かれておりますが、独特のスローモーション撮影や細かいカット割りの演出は創出されておらず、バイオレンス要素も薄めで、ラブストーリー要素が強め。但し、話のテンポの良さは片鱗をのぞかせていますね。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
矢萩久登

2.5戦時トラウマ

2024年11月8日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

戦地でのトラウマで粗暴になる人がいることは知られているが、そういった人のケアの可能性みたいなものとして見ればいいのか?

コメントする (0件)
共感した! 0件)
ouosou

3.5【”ニヒルなガンマンが決して帽子を脱がなかった訳。そして、彼が知り合った女に対して行った贖罪。”サム・ペキンパー監督が描く一捻りある乾いたハードボイルド西部劇。モーリン・オハラの美しさが映える作品。】

2024年7月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

興奮

幸せ

■南北戦争中に自分の頭の皮を剥がそうとした男を探し続けているイエローレッグ(ブライアン・キース)。
 ある日、町でリンチに遭っていた男を救った彼は、その男が因縁の相手・ターク(チル・ウィルス)であると知る。
 自らの手でタークを殺すべく、イエローレッグは素知らぬ顔で彼と彼と共に銀行強盗を企むビリー(スティーヴ・コクラン)と共にチームを組むが、襲おうとした銀行から出て来た強盗を撃った際に、誤って踊り子で町の女たちから謂れもない噂を流されているキット(モーリン・オハラ)の息子を撃ってしまう。

◆感想

・ブライアン・キース演じるイエローレッグが、実に渋い。

・イエローレッグとビリーとタークの奇妙なトリオと、殺された息子を亡き夫の墓に埋葬するために、墓の或るシリンゴへ向かうキットの道中も、乾いた空気感が漂う。
 イエローレッグは、キットの息子を殺した罪悪感からか、断られても彼女に同行し、ビリーとタークも付いてくる。

■矢鱈とキットに執着するビリーは、途中で彼女に襲い掛かるも、イエローレッグに追い払われ、逃走。タックも居なくなる。

<ラスト、イエローレッグはキットの夫の墓を見つけるが、銀行強盗を終え、再び現れたビリーとタークの挟み撃ちに合うがビリーはイエローレッグに仇を撃てと言うが、古傷を抱えていたイエローレッグの銃弾は、タークには当たらず、タークはビートを背後から撃ち殺す。
 イエローレッグはタークに身を明かし復讐しようとするが、愛を告げるキットに止められ、タークは追って来た保安官たちに捕縛され、連行される。
 そして、イエローレッグはキットと何処かへ、馬に乗って去るのである。
 今作は、サム・ペキンパー監督が描く一捻りある乾いたハードボイルド西部劇である。>

コメントする (0件)
共感した! 2件)
NOBU

4.0​​何と60年前の映画!​​ ​まさか映画館で4K鑑賞する日が来るとは! マカロニウエスタンの傑作が甦る!

2024年4月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

​マカロニ・ウエスタンの傑作第一弾!
その最初っから、エンニオ・モリコーネの口笛のテーマ曲と銃声、クレジットの入り方、アニメーションのオープニングからカッコイイ。
そして、イーストウッドの服装、身のこなし、もちろん早撃ちのガンアクション!
口数の少ないクールなキャラクター、英語を話してるのに山田康雄の声にしか聞こえない。
吹替の声が染みついていて、自動的に脳内変換してしまう。
有名な黒澤映画「用心棒」の西部劇版。
そのストーリーも面白い。
今更になってその「用心棒」も小説の引用だったことを知りました。

数十年前、モデルガン・ブームが巻き起こり、「ダーティ・ハリー」登場前までは西部劇に登場する銃が人気で、くるくるまわして腰のホルスターに銃をおさめるのが大流行!
渋谷道玄坂のMGCに通い、(小遣貯めた小金持ちの友人が)購入!
金属製の銃の銀色の塗装を紙ヤスリではがし「ガン・ブラック」で黒く塗ってた!(時効!)

コメントする (0件)
共感した! 0件)
ITOYA

3.0戦争のはらわたを視聴して面白かったのでペキンバーの作品を見ることに...

2022年7月28日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

戦争のはらわたを視聴して面白かったのでペキンバーの作品を見ることにした2作目.南軍と北軍の戦争が身近にあったころの西部劇で,主人公イエローハットにも好敵手ビリーにもヒロインのキットにも突っ込みどころのある意思決定をしているのは当時の価値観が今とはとても異なっていたからなんだろう.本筋である復讐劇を見失った後に,ヒロインともにインディオからの逃避行は,いったい何だったんだろう.インディオに翻弄される中で二人の関係が縮まったものの,イエローハットの銃の腕は映画の初めから終わりまでひどいものでてんで人を打つことができないまま.インディオを倒したのも結局ヒロインだったし,過去の古傷によって片手が上がらなくなっていることの影響もあるのだろうけれど,しかしそれを描くには冗長な気もしたがどうなんだろうか.

コメントする (0件)
共感した! 0件)
ケ

2.0ペキンパー監督だけど

2016年12月7日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

主人公(ブライアン・キース)の復讐劇と、主人公が誤って殺してしまった少年の母親(モーリン・オハラ)との贖罪のロードムービーが重なる。
西部劇としてはちょっとずれたおり、ペキンパー監督は何をやってんの?という感じ。
邦題が投げやりなのもうなずける。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
いやよセブン

2.5dancehall black garter

2014年6月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

楽しい

ペキンパ。モーリン小原。いきなりダンスホールの踊り子たの息子が、主人公の誤射で死ぬ。その男の子の埋葬先への旅の護衛として、主人公が後を追う。傷を負ったもの同士の弔いの旅路in大西部。子の亡骸を乗せてアパッチ出没地帯を行く馬車。あるいは南北戦争で頭に傷を負ったためどんな時もテンガロンをとらないカウボーイのロードムービーでもある。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
ssspkk

2.5盛り上がりどころがない

2013年3月11日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

興奮

総合50点 ( ストーリー:50点|キャスト:60点|演出:60点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )

 サム・ペキンパー監督ということで期待して見た。しかし砂漠地帯を旅する場面が続くのは退屈だし、一人息子を失った母親は埋葬場所に固執するものの意外と取り乱さずあっさりとしているし、元南軍二人の行動はわけがわからないし、物語にたいして盛り上がりどころもなくて面白くなかった。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
Cape God
PR U-NEXTで本編を観る