格子なき牢獄
解説
レオニード・モギーの「赤ちゃん」に次ぐ第二回作品で、ジナ・カウス、オットー・アイス及びエドガー・アイス共作の原案に基づいて「若きハイデルベルヒ」のハンス・ウィルヘルムがストーリーを書き、モギーとウィルヘルムが協力して台本を執筆し、「舞踏会の手帖」「望郷(1937)」のアンリ・ジャンソンが台詞を書いた。キャメラは「大いなる幻影」と同じくクリスチャン・マトラとクロード・ルノワールが協力し、音楽はウィル・グロスの担任である。主演は「楽聖ベートーヴェン」のアニー・デュコオ、「巨人ゴーレム(1936)」「隊長ブーリバ」のロジェ・デュシェーヌ、モギーが見出した新人コリンヌ・リュシェールの三人で、新人ジゼール・プレヴィル、「生けるパスカル(1936)」のジネット・ルクレール及びマクシミリエンヌ、マルグリット・ピエリー等が助演している。
1938年製作/98分/フランス
原題または英題:Prison sans Barreaux
ストーリー
町はずれの丘の上に固い鉄格子で外界と遮られている少女感化院の中には、百数十名の若い娘達が、苛酷で意地悪な院長マダム・アッペルの監視の下で苦役に服していた。小さな過失を犯した娘や無実の娘まで、堕落しきった少女と一緒に生活するうち、その悪習に感染し、厳しい懲罰は却って彼女達をひねくれさせるだけだ。この私立感化院が今度政府の管轄に属する事となり、若く美しいイヴォンヌが新院長として任命された。それは彼女の婚約者たる青年医師ギイ・マレシャルが秘かに運動した結果であった。彼は八ヶ月後にはフランス領インドシナへ赴任しなければならぬので、その時は彼女も一緒に出発するつもりである。イヴォンヌはマダム・アッペル始め監督一同の反対を押し切って、一切の肉体的懲罰を厳禁し、少女達の不平は申し出るようにと云い渡した。けれども今迄幾たびも訴える毎に折檻を受けた彼女達は、決してそれを素直に受け取らなかった。或る日、憲兵に連れ戻された娘があった。度々無実を訴えて脱走を企てた十七の娘ネリーである。イヴォンヌは彼女を呼ぶと、懲罰の代わりに町まで使いに行く事を命じた。初めて人に信用されたネリーは、感激にわなないて公然と門外へ出て行った。そして用を果たして帰る途中、美しい景色に見とれて草原に寝転んでいるうち、ついそこで眠りこんでしまった。門限までに帰らないネリーの事で、マダム・アッペルが激しくイヴォンヌを責めている時、ネリーは時刻に遅れたのを詫びながら帰って来た。こうして陰鬱な感化院にも、次第に少女達の明るい生活が築かれて行った。ネリーも今は昼間だけマレシャルの許で看護婦として働いていたが、いつしか深く彼を愛するようになり、秘かに彼の時計からメダルをはずし、夜は寝床で頬ずりをしながら眠るのだった。イヴォンヌは仕事の忙しさから、マレシャルと会合の約束を守れない事も多くなった。そして今はマレシャルの心にも、ネリーの面影が強く焼きつけられて、或る時思わず彼女を激しく抱き締めるのだった。二人が愛し合っている事を知ったのは、院内でも有名な不良のルネだった。彼女は医者の所からアルコールを盗んで来なければ、二人の仲を皆に言いつけるとネリーを脅迫した。マレシャルがインドシナへ出発する日が来たけれど、今は仕事に生命を投げ出したイヴォンヌは、彼と一緒に行く事が出来なかった。マレシャルはネリーに近づくと、放免になったら僕の許へ来てくれと言い残して淋しく出発した。それから間もなくアルコールに酔ったルネが院内の警笛を鳴らして大騒ぎとなった。ネリーはアルコールを持ち込んだ罪を責められたが、堪りかねてルネは一切を自分の罪であると告白した。イヴォンヌはマレシャルを愛してはいないと涙ながらに言うネリーに向かい、彼の許へ行くように優しく説いてやった。数時間後、残り惜しげに院を立ち去るネリーに向かって、手をふりながら別れを告げるイヴォンヌの姿は、神のように気高く夕日に照らされていた。
スタッフ・キャスト
- 監督
- レオニード・モギー
- 脚本
- ハンス・ウイルヘルム
- 脚色
- レオニード・モギー
- ハンス・ウイルヘルム
- 原案
- ジナ・カウス
- オットー・アイス
- エドガー・アイス
- 台詞
- アンリ・ジャンソン
- 製作総指揮
- ミシェル・クストーフ
- 撮影
- クリスチャン・マトラ
- クロード・ルノワール
- 美術
- ジョルジュ・ヴァケヴィッチ
- コラッソン
- 音楽
- ウィル・グロス
- 作詞
- ロジェ・フェルネ
- 指揮
- ジョージ・デルヴォ