劇場公開日 1993年10月2日

「タイムループで気づく“何もない場所”にあった「成長の全て」」恋はデジャ・ブ 岡田寛司(映画.com編集部)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0タイムループで気づく“何もない場所”にあった「成長の全て」

2020年5月1日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

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“何もない”田舎町の1日を永遠に繰り返すハメになってしまったら――冷静に考えると結構怖い。出会う人、見るモノ、起こる事件――全てが同じ事の繰り返し。でも、タイムループものは「自分が変わらないと、周囲が変化しない」という約束事があるからこそ、成長という要素が描きやすいんですよね。

コメディ調の本作は、その成長の描き方が見事。主人公は、超絶いけ好かない天気予報官のフィル。天気予報官という「未来を予測する職業」なのに“明日がやって来なくなる”という皮肉も良いんです。彼は取材先の田舎町「パンクスタウニー」を“何もない退屈な町”と見下していますが、それが「成長のための全てがあった(“何もない”の否定)」と変化していく点も◎。

本作のユニークなポイントは、1回のタイムループで起こる出来事を、あまり深堀しないところ。カットが切り替われば、既に“別の今日”になり、また次のカットでは“別の今日”。あくまで「明日」のための要素でしかない――だから、どんどん「今日」を終わらせよう。この演出がかなり楽しい。同じシーンを繰り返しながらも、フィルの変化を見せることで、時の積み重ねを表現している点が素晴らしいです。また「バカは死ななきゃ治らない」という諺がありますが、本作の世界では「バカは死ぬことで治っていく」という、ある意味ポジティブな捉え方。主演ビル・マーレイの“やりたい放題”“死にたい放題”は必見です。

余談:本作が気に入った方は、是非「ハッピー・デス・デイ」「ハッピー・デス・デイ 2U」も鑑賞してみてください。ホラーではありますが、作品の核は「タイムループ×成長」。このジャンルにおける近年の秀作。もっともっと楽しみたい方は、 Netflixの傑作ドラマ「ロシアン・ドール:謎のタイムループ」も超おすすめ。1エピソードは約30分。全8話。さっくり見れる傑作ブラックコメディです。

岡田寛司(映画.com編集部)