「大西洋横断単独飛行の最短時間を記録した飛行家アンドレ・ジュリュー(...」ゲームの規則 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
大西洋横断単独飛行の最短時間を記録した飛行家アンドレ・ジュリュー(...
大西洋横断単独飛行の最短時間を記録した飛行家アンドレ・ジュリュー(ローラン・トゥータン)。
熱狂の中での第一声は「記録に挑んだのはひとりの女性のため。だが、彼女は迎えにすら来てくれていない」という憤懣の嘆き。
社交界では、アンドレの相手はラ・シェネイ候爵夫人であるクリスチーヌ(ノラ・グレゴール)であることは有名だった。
アンドレの親友で、クリスチーヌの幼友だちであるオクターヴ(ジャン・ルノワール)は、候爵の別荘地コリニエールでの狩猟の集いにアンドレを招待させることにした・・・
といったところからはじまる物語。
そこへ、
クリスチーヌの夫のラ・シェネイ候爵ロベール(マルセル・ダリオ)、
ロベールの愛人ジュヌビエーヴ(ミラ・パレリー)、
クリスチーヌの小間使いで多情な女性リゼット(ポーレット・デュボー)、
リゼットの夫で狩場の管理人シュマシェール(ガストン・モド)、
密猟者で後に邸の使用人として雇われるマルソー(ジュリアン・カレット)
など、
多彩な人物が入り乱れて、狂騒的で抜群のコメディが描かれます。
過剰なセリフに多彩な登場人物、狂騒的な展開を実に巧みに描いていくのは、脚本と演出の冴えというべきもの。
とはいえ、冒頭にあげたアンドレ、クリスチーヌ、オクターヴに絞ったあらすじから、最終的には「狩場の悲劇」が起こることはおおかた予想がつく。
というか、予想をつけないと、抜群のコメディから一転する後半の静けさベースのサスペンスを愉しめない。
起こった「狩場の悲劇」(正確には、場所は狩場ではないが)をどう収めるのか。
ここを、間髪も入れずに、皮肉な結末で締めくくる。
社交界を舞台にしているが、人間そのものへの冷淡な視線も感じられる。
人間そのものへの冷淡さ、人間の残酷さは中盤、かなりの尺を割いて描かれるウサギ狩り、キジ撃ちのシーンからも感じ取ることができる。
一列に並んだ勢子によって追い出され、撃ち落とされるたキジ、瞬時に斃れるウサギ。
並べられたウサギの死骸。
「前に出て撃たないの」「獲物とまちがえて撃たれちゃうわ」のやりとりも後半の展開を予測することができる。
モノクロ、戦前作品、フランス映画、ジャン・ルノワールと敷居が高い感じがするかもしれないが、現代的過ぎるほど現代的な映画のように思えました。
なお、終盤、余興でクマのぬいぐるみを被るオクターヴの姿は、『ホテル・ニューハンプシャー』のナスターシャ・キンスキーを思い出したりしました。