「風前の灯」ゲームの規則 komasaさんの映画レビュー(感想・評価)
風前の灯
物語を要約すると、おもちゃ箱の中に密猟者と飛行士という新しいおもちゃを放り込んだら箱ごとひっくり返った。片付け終わって気がついたら、新しいおもちゃが無くなったけど、まあいっか!そんな感じか。
仏頭の脇で行われる侯爵と愛人の会話。悪趣味だが視覚的にとてもインパクトがある。ここでの会話が、物語全体を表している様に思う。現代のSNS文化同様に、言葉は自己陶酔、自己欺瞞の為の道具だ。それが暗黙の了解でありルールなのだ。
そんな館の住人たちにとっては、他人の愛や命は余興という暖の為に焚べる薪でしか無い。国民的英雄であり自分の妻に懸想する礼儀知らずな青年なんていうのは最高の薪だったのだろう。森番に目をつけられている密猟者は、火付けのための松の葉か。執事が上手く焚き付け、侯爵は自らも火の粉を浴びつつ遊興にふける。この辺りを悪意で無く当然の振る舞いとして行っているから恐ろしい。
この作品が公開されたのは1939年、まさに第二次世界大戦開戦の年。オーストリアはナチスドイツに占領され、トラップ一家は既に国外へ脱出したころあいだろう。翌年にはパリも陥落する。そう考えると館の住人たちは茹でガエルの様にも見えてくる。
そんな館に辟易して最後に立ち去るルノアール。彼には未来がどの様に見えていたのだろうか。そんな事を考えると、あの生々しい狩猟シーンがより恐ろしくなる。
…
表現力、完成度、芸術性はもちろんのこと、時代感覚の鋭さが凄い。
…
ココ・シャネルの衣装は、視線を引き付ける力が強い。
コメントする