「残念な人々」黒猫・白猫 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
残念な人々
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登場人物が風体、人柄ともにことさらに汚らわしく描かれ、残念過ぎてだれにも感情移入できず、下劣な笑いが渦巻き拷問のような映画でした。確かにこうまで笑えない映画も珍しいと邪推してみたくなりました。
主役はセルビアのロマ人たちですね、法も倫理も無く闇社会が幅を効かせ、人々は享楽的に無為の人生をおくる暮らしぶりが描かれます。そんな暮らしから羽ばたこうともがく若者の存在は一筋の光明なのでしょう。ただ青年は頼りなく、彼女はむやみに銃を撃つので上手くゆくのか分かりません。
感性の違いなのでしょう、ドジなキャラがドジを踏んでも当たり前で笑えません。道化師もどきを集めて馬鹿騒ぎを演じれば喜劇になるという古典的手法ですね、ただクストリッツァ監督は食えない人、そんなに単純な訳はないでしょう、笑いづらい理由のこじつけかも知れませんがピエロにペーソスや欺瞞性を感じるのと同様にロマ人の民族的悲壮感の裏返しとしての悲喜劇かもしれません。
ネズミの扇風機、車が好物の豚さん、ガチョウも猫も名演でした、劇中の人間たちも動物たちと妙に調和して見えるところは監督の人間観なのでしょう。
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