「学園モノのなかで一番好きな痛快ヴァイオレンスSF」クラス・オブ・1999 kobayandayoさんの映画レビュー(感想・評価)
学園モノのなかで一番好きな痛快ヴァイオレンスSF
2001年の正月明けにVHSをレンタルして初鑑賞、その後、2003年2月にDVDを購入し、現在までに、数えられないぐらい観ている(地上波放映を含めて)作品。
久々に劇場で観ていない作品のレビューを致します。『コマンドー』や『炎の少女チャーリー』等で知られるマーク・L・レスター監督が1984年に放った学園ヴァイオレンスのカルト的な名作『処刑教室(Class of 1984)』の続編として製作されたのが本作『クラス・オブ 1999-処刑教室2-』であり、前作とは真逆の近未来のSFアクション映画として仕上がった力作となっています。
アメリカ中の高校で校内暴力事件が多発し、ギャング化した不良たちが武装し、“自由発砲地帯”という警察すら立ち入らない無法な状況下が生まれる時代において、学校での授業を再開するために新設された“教育防衛局”はロボット工学の専門家であるフォレスト博士(ステイシー・キーチ)が開発した3体の教師ロボット(パム・グリアー、パトリック・キルパトリック、ジョン・P・ライアン)をマイルズ(マルコム・マクダウェル)が校長を務める学校へ試験目的で送り込み、その実験の為にマイルズは娘のクリスティ(ステイシー・リンド)を転入させ、同時に同校を代表する不良グループの一つ“ブラックハート”のリーダーで刑務所で服役していたコーディ(ブラッドリー・グレッグ)を仮釈放させ、学校へ登校させるが、コーディは服役生活によって丸くなっていて、ブラックハートからの脱退を模索していた(粗筋、ここまで)。
『処刑教室』は観ていません。非常にマニアックな内容なので、そういうのを取り扱うレンタル店を探しても、2001年の段階で廃盤となっていて、2015年秋にDVDとブルーレイが発売されても、レンタルの取り扱いは地元の店舗では行われていないので、そちらとの比較などをせずに本作を見続けてきました。学園を舞台にした映画は沢山ありますが、私はその系統では本作が一番好き(これに次ぐのは『パラサイト(1999年)』、『ジェニファーズ・ボディ(2010年)』、『ガール・ネクスト・ドア(2004年)』の三本)で、好きな理由は危険な世界だけれども、現実には無い世界(不良や暴力的な世界を除いて)なので、そこに夢があり、何故か、憧れます。
本作に登場する不良たちのイメージは自分の想像とは違うもので、全員が喧嘩に強かったり、ガタイが良いというのではなく、体育教師ロボットのブライアン(パトリック・キルパトリック)に銃を向けた途端に瞬殺されるモホーク(シェーン・グレゴリー・サリヴァン)のようにひょろっとした弱そうなタイプのメンバーがドラッグを吸って、ハイになった状態で「俺は力があって強いんだ」と思い込みながら、仕方なく不良をやっているというように見え、そこは既存の不良を題材とした作品とは違った設定だと思います。あまりにも弱いので、少し可哀想に見えるところもあり、ブラックハートの正式メンバーになったばかりの少年エンジェル(ジョシュア・ジョン・ミラー)や対立するレーザーヘッドのフラヴィオ(ブレント・デイヴィッド・フレイザー)等は「無理して、不良を続けなくても良いんじゃないの」と思えてしまうのですが、そこが魅力の一つと言えるでしょう。クリスティにチョッカイを出して、コーディにボコボコにされるフラヴィオがノーザー(ランドン・ウェイン)の死によって、レーザーヘッドのナンバー2なポジションに昇格し、リーダーのヘクター(ジェームズ・“ジミー”・メディナ・タガート)に助言したりと見せ場のあるポジションに居るのはキャラ的に奇跡なのではないでしょうか。
本作はキャラクターがそれぞれ熱さのある描かれ方をしていて、ブラックハートのメンバーにとっては、コーディが出所した事に喜びながらも、彼が活動に興味を示さない事に苛立ちを募らせ、一時は追放することを決めて、新たな決意で挑んでも、レーザーヘッドとの戦争の始まりによって、コーディが戻ると、今までの苛立ちも忘れて、協力し合い、ブラックハートの紅一点であるドーン(ジル・ギャツビー)に至っては、コーディを信頼していて、重大な真実に気づくのも早く、頼りになるキャラ(出番は短いのが残念)となっていて、クライマックスでは敵対しあっていた二つのチームが手を結んでからは、「本当はスゴく仲良しなんだね」と思えるような軽口を言い合ったり、気の利いた台詞があったりと、意外な見せ場も満載で、彼らがカッコ良く見えてきます。
3体のロボット教師たちもカッコ良く、段々と明らかとなる戦闘能力と際立つ冷酷さは、この頃に量産されていた『ターミネーター』や『ロボコップ』の亜流作(本作は『ネメシス』と同様に、それらの亜流に含める必要はないですが)のなかで最もユニークで、歴史担当のハーディン(ジョン・P・ライアン)の思考力の高さは開発者のフォレスト博士をも上回っているようで、このロボットたちは単なる機械じゃないと思える部分があります。彼らに内蔵された兵器も素晴らしく、それぞれが担当する教科や外見に応じた形で設定され、違和感がなく、これだけ強力な兵器を持つロボットを主人公たちが、どのように倒していくのかという展開にハラハラさせられます(しかし、ロボットなのでやる事はスゴいですが、数多くのB級映画のヒロイン役に扮して、その名を刻み込んできたパム・グリアーの姿をした化学の先生が居る学校というのは、本当に夢があり、「こんな学校、あったら良いな」と思うことも少なくありません)。
『時計じかけのオレンジ』で不良の代名詞を刻む役に扮したマルコム・マクダウェル、現在も曲者俳優として一線で活躍するステイシー・キーチの好演、マーク・L・レスター監督が『コマンドー』以来の痛快ヴァイオレンスに挑み、ミッジ・ユーロやナイン・インチ・ネイルズといった90年代初頭のロックな楽曲に彩られた音楽、コマ撮りで撮影されたSFX、学校のなかをオートバイで走り回るブッ飛びアクションなど一言では語れない面白さが詰まった本作は、映画ファンなら愛してやまない作品と言えて、一度観たら忘れられないものだと思います。本作のスタッフやキャストは続投せず、回想シーンで映像が使用されている続編『クラス・オブ1999 パート2』もあり、そちらは元キックボクサーのサシャ・ミッチェルの生身のアクションと仰天なオチなど個人的に好きな作品ですが、本作とは別物(それでも『処刑教室』と本作を含む三部作としてのDVD化を願っています)で、それぐらい、学園モノのなかでは本作を別格として認識しています。