「パゾリーニの傑作」奇跡の丘 ジョニーデブさんの映画レビュー(感想・評価)
パゾリーニの傑作
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パゾリーニがまだまともな映画を作っていた頃の傑作。しかも、かなり聖書に忠実で、変に奇をてらった演出もなく、淡々とキリストの生涯を描いている。そういう意味では、137分という長いこともあり、人によっては退屈だったかもしれないが、個人的には結構引き込まれた。
出演者はほとんど素人らしいが、冒頭のマリアと夫ヨセフ、ヨセフの前に現れた天使(天使は一瞬だが、何度か現れる)、その3人の表情とそのモノクロのカメラワークに圧倒される。
イエスが生まれたベツレヘムやイスラエルの街並みが、まるでタイムスリップしたような、本当にその当時の街並み、山や砂漠、海岸等が、いかにも聖書に出て来そうで、よくこんなところを見つけてロケしたなと感心する。実際には南イタリアでロケしたようであるが。
音楽も秀逸で、特に「マタイ受難曲」と「時には母のない子のように」が印象的だ。
アフレコも結構合っている。出演者が素人なので、何回も録音し直して、満足いくまで合わせていたのだろう。「アポロンの地獄」はあまり合っていなかった。
彼の晩年の作品と、スキャンダラスな殺人事件を考えると、この当時はこの映画のようなごく真面目な映画を作っていたことに驚く。
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