「せめぎあいの中に」黄色いリボン 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)
せめぎあいの中に
1949年。ジョン・フォード監督。カスター将軍率いる部隊の全滅(「アパッチ砦」の題材)後、各地の先住民族が結束してアメリカ軍に対峙する場面が増えてきた。部隊を指揮する大尉は現役引退を5日後に控え、最後のパトロールに出ることに。同時に、現地を離れる上官の妻と姪を駅馬車まで送ることにもなり、その姪は部隊の中の若い士官二人と三角関係にあって、、、という話。
戦争なので題材はシリアスだし各所で人も死ぬのだが、全体的にコミカルで開放的。それは、何かが決定されていて動かせないということがなく、事態はどこまでもせめぎあいの中にあることが描かれるからだろう。軍隊の命令には反論が前提とされていちいち命令と反論を記録しようとするし、若い男女の三角関係は、相思相愛に気づいてないだけの男女の喧嘩腰の口論によって活気づけられているし、多くの犠牲者が想定される避けられない戦いは最後まで別の手段が模索されるし、そもそも、主人公の引退というもそれを目安にカウントダウンまでしながら最終的にひっくりかえるような性質のものだ。「終わり」「目的」を目指してまっしぐらということがなく、すべては常にせめぎあいの中に、その過程にある。
その意味では、一見、無駄に見えるシーンに大きな意味がある。主人公に秘書的に親しむ部下は酒好きで自らも3週間後に引退を控えているのだが、その部下が私服で酒を飲むシーン。物語上の意味は後から付け足しされているが、そこで重要なのは、男たちが笑いながら殴り合うアクションである。殴る=敵対するではないのだ。
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