劇場公開日 2024年11月29日

「スパイの内心を描いたサイコサスペンスの秀作」カンバセーション…盗聴… 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0スパイの内心を描いたサイコサスペンスの秀作

2024年12月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ちょうど50年前の1974年に制作された、名匠フランシス・コッポラ監督作品でした。主人公のハリー・コール(ジーン・ハックマン)は、盗聴を生業とする業者。しかもFBIとかCIAに所属しているのではなく、商売でやってるんだから驚き。まあ探偵の一種と言えば一種なんでしょうが、盗聴専門という”専門職”が、彼だけでなく、そうした業界まで形成されているように描かれており、普通に法律違反のような気がするのですが、本当にこんな職業あるんですかね?

それはいいとして、冒頭、人混みを散歩するアベックを遠距離から盗聴するシーンが描かれたので、いわゆるスパイ物なのかと思いきや、そうではありませんでした。実際は過去に行った盗聴相手が、その後殺されたことがトラウマになっているハリーが、また同様の仕事を受けてしまい、煩悶するというお話でした。最終的にはどんでん返しが待っていて面白かったのですが、必ずしもそこに主題がある訳ではないように思われました。各種盗聴方法の紹介をした上で、部下や同業者らとの交流を描くことでハリーの人となり、キャラクター設定を綿密に描いた上で、彼が内心で自らの盗聴に対して贖罪の気持ちを抱いていることが示され、半ばノイローゼ気味になってしまう様は、中々興味深かったです。

そして何よりも感じたのは、半世紀前の映画でありながら、その描写やストーリー展開に全く古さを感じなかったこと。勿論携帯電話もインターネットもない時代なので、盗聴器具などは時代物という感もありましたが、スパイの内心の描き方という点では、流石は名匠コッポラと思わざるを得ませんでした。

そんな訳で、本作の評価は★4.2とします。

鶏