「偉大なる魂」ガンジー Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
偉大なる魂
総合80点 ( ストーリー:75点|キャスト:85点|演出:80点|ビジュアル:80点|音楽:65点 )
子供の頃は、暴力に対して非暴力で抗議をするなんて、効果が薄くて非効率であるばかりか勇気がないと考えていたこともあった。今は暴力に対して非暴力で抗議を続けることは、時に命を差し出す大きな覚悟と勇気と行動力と信条が必要なことを認識している。強い武力を持つ白人を相手にするには、武力でぶつかる以外の戦いかたをするほうが良いという計算もあったのだろう。ただ抗議をするだけで終わりではなく、それを報道機関を使って効率的に世間に知らせ人々の関心と賛同を得て目的を達成するようにするには、状況を分析し導くべき方向性を示しそこに至る方法を示す知能と注意力と計画力もいる。
ガンジーが直面するのは、白人からの差別と支配だけではない。インド人同士で身分差別があり、宗教と民族間の激しい対立があり、その間にたくさんの命を奪う暴力が発生する。それぞれの民族・人々がそれぞれの考えかたと利害関係を持ち、彼はそれらを調整しまとめなければならない。
ガンジーは強い意思で非暴力主義によって、独立と民族自決という目的を成し遂げた。だからこそ偉大なる魂という称号に真にふさわしい。
ガンジーを演じたベン・キングスレーがそんな彼の偉業を良く表す素晴らしい演技をしたと思う。英印の混血らしいが、見た目も含めてガンジー像が再現されていた。当時の状況を再現した衣装・美術と映像も出来が良かった。
気になったのは、たくさんの暴力とその犠牲者の描写が少ないこと。ガンジー自身は非暴力主義であったが、それでもインド独立には民族間対立も含めてたくさんの血が流れた。そのような場面は数も少ないしその酷さを表す直接的な描写も少なく、歴史の悲惨な現実が薄められている。