劇場公開日 1975年7月12日

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「切ない大人の恋愛物語とその復讐劇 そこからブレない どんどん心に染み込んでくる 気がつけば忘れられない映画になっていると思います」ガルシアの首 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5切ない大人の恋愛物語とその復讐劇 そこからブレない どんどん心に染み込んでくる 気がつけば忘れられない映画になっていると思います

2021年2月10日
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鑑賞方法:DVD/BD

疑いも無くサム・ペキンパー監督の最高傑作

男は50手前、女は30半ば
どうにかしなければならない
もう時間切れは迫っている
それは感じている
一皮剥けば焦燥感で一杯
でも、何をどうしたら抜け出せるのか
何をしたらいいのか、サッパリ分からない

だから、今日も明日も昨日の延長
一応、楽しく仕事してご飯食べれて、異性のパートナーもいるようないないような

そうして今日までズルズルと生きてきてこんな歳になっちゃった
手近ならところで手を打てば良いじゃない?
そんなこと分かってる
そうしようかと思ったこともある
でもなんとなくもっと良いひとが現れるような気もして踏み切れない

別にこのままでもいいじゃないか、慌てなくても
そんなこと思ってたら、いつの間にかこんな歳になってしまった

そんな男と女の物語
こんな男女は多いだろう

ベニーはメキシコのとある場末の飲み屋のピアノ弾きのアメリカ人
もうメキシコに来て長いのにまだスペイン語が満足に話せない
それは覚える気がないからだ
こんなとこ早いとこ抜け出すつもりだった
それがズルズルと気がつけばもう10年くらい経ってたかも知れない

そんなところにぶら下がった、ここから抜け出すきっかけ
それがなんとあいつ、エリータの元彼の首だ

あいつといっても、俺の女かというと、そんなようなそうでないような
だから俺とガルシアは似た者同士だ
あいつの方が10程若いが、俺みたいになるに違いない
俺だってガルシアみたいにやらかして逃げて来て、流れ流されこんなところに居着いてしまっただけ
ガルシアもそうなる
だからそんな奴は死んだって誰も悲しみはしない
気にもしない
俺の為に殺されてくれ

エリータはベニーの女
ガルシアは昔から知ってたろくでなし
今彼のベニーもろくでなし、どっちだっておなじ
だから急に頼って来たからガルシアとはちょっと寝ただけ
あいつが本気な訳がない
まだベニーの方が長いからなんとかなるかも知れないけど、あてになんかできない
だからといって、いまさら切ることもないし
今までどおりダラダラと付き合うだけ

そんな二人
一花咲かそうなんて思ってもいない
ここから抜け出したいだけ
似た者通しのどん詰まりの二人で、別の土地でやり直したいだけ

二人で街を車で出たら楽しいじゃないか
遅かったけど、俺も私も幸せになれるかも知れない

それがどうだ
バイクの二人組からケチがついた
墓についてみれば、ババア始めガルシアの親族一同悲しそうに葬式してやがる
あいつは俺と同じで悲しむ奴なんていないはずじゃなかったのか?
エリータまで殺されてしまった

このまま生きていたって仕方ない
エリータの復讐をしてやる
俺をこんな人生にした奴らに復讐してやる

もともとこんなこと始めた奴をぶっ殺してやる
考えてみれば、俺がこんなていたらくな人生に落ちぶれたのはそいつらのせいじゃないか
責任とらしてやる

ガルシアは俺と同じだ
助手席に載せたら友達みたいについ話かけてしまう
お前の敵も取ってやる

だからエリータと来る途中に泊まった同じ宿で、エリータがへたり込んで泣いていた、シャワールームの床に首を置いてやる
彼女と同じようにシャワーを浴びて泣けよ

切ない大人の恋愛物語とその復讐劇
そこからブレない
どんどん心に染み込んでくる
気がつけば忘れられない映画になっていると思います

旅の途中でのピクニックのような休憩
ウォーレン・オーツとイセラ・ヴェガ の二人の笑顔は最高の表情でした
このシーンが甘く素晴らしいからこそ、終盤の殺戮と釣り合うのです

傑作です
日本だけでヒットしたのはなんか誇らしいです
日本の観客の観る力が素晴らしかったということだと思います

あき240