劇場公開日 1952年9月4日

「4時間近く飽きさせないのはなんといっても原作の力」風と共に去りぬ あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.54時間近く飽きさせないのはなんといっても原作の力

2025年6月1日
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鑑賞方法:映画館

南北戦争を背景としたドラマなのでなんとなく古い時代のものかと思ってしまうがマーガレット・ミッチェルの原作は映画の3年前の刊行である(1936年)。映画化権を取得したデビッド・O・セルズニックがMGMから資金を調達しクラーク・ゲーブルも借り出して製作した。アメリカでの公開は1939年で翌年にアカデミー作品賞を受賞。日本での公開は戦後の1952年となった。
この映画には様々な都市伝説があるが、戦時中にシンガポールあたりでフィルムを実見した人が、こんな作品を作る国と戦争しても勝てない、と思ったという話がある。繰り返し引用されるが出典がハッキリせず作り話っぽい。
久しぶりに映画館で観たが、確かに4時間近く飽きずに観ることができるのはさすがではあるものの、ヒロインに次々に問題、悲劇が襲いかかる設定が飽きない原動力であって、それはひとえに原作の力というべきであろう。細部にいたるまで原作通りであり、元々がアトランタの主婦であったミッチェルが南部の歴史に取材した上で、一般読者受けする話に徹底して改編しているため面白くないはずはない。
タラの邸宅、農園、アトランタの街並みのすべてが当時のハリウッド映画らしくオールセットである。キャメラはかなりハイキーなタッチで撮影されており、今回、4kで修復されたこともあって、全般に影が薄く、少し空々しい印象を受けてしまう。
この作品のテーマは「タラの土地」である。ヒロインは大都市アトランタに出ていっては挫折してタラに回帰する。彼女は南部の女、もっと端的に言えば南部の地主である。だから原点は生まれ故郷のタラの土なのである。この作品でも彼女が手で土をすくうところ、大根?を齧るところも出てくるが、そこはハリウッド的表現の限界であってアーシーな感じがしない。
当時のスターシステムに基づく映画づくりでは、この映画はなんといっても、クラーク・ゲーブルの作品ということになると思う。
ヴィヴィアン・リーは熱演ではあるが基本的にはあまり上手くもないし南部娘としての伸びやかな感じは出せていないような気がする。基本的には彼女はイギリス女優なのである。ひょっとしたら世紀のミスキャストということかもしれない。

あんちゃん
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