「個性極まるシュトロハイム監督の残虐で非情な人間ドラマの伝説映画」愚なる妻 Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
個性極まるシュトロハイム監督の残虐で非情な人間ドラマの伝説映画
アメリカ無声映画期に多額の制作費と桁外れな長尺の撮影フィルムで話題をさらったと言われる作品で、シュトロハイムの名と共に映画史に遺る異色大作。但し本来の34巻の超大作は、映画会社ユニバーサルの意向により公開当時は15巻版に縮小され、更に他人(A・D・リプリー)の再編集が加えられた11巻でしか現存しないのが残念でならない。それでも異端にして完全主義者のシュトロハイムの強烈で大胆な演出は、同時期のD・W・グリフィス監督やセシル・B・デミル監督とは全く趣を異にして、見応えの点ではとても満足した。特に残虐で非情なカラムジン伯爵に憑依したようなシュトロハイムの恐ろしい演技が凄い。当時の検閲や批評家が衝撃を受けたという逸話も頷ける。悪徳の主人公を徹底的に描き切った恐怖映画の人間ドラマ、その迫力に圧倒される。
1978年 10月31日 フィルムセンター
この映画の印象を言葉に表現するには語彙力が及ばない。敢えて例えれば、ルキノ・ヴィスコンティ監督の「地獄に堕ちた勇者ども」を更に極悪非道にした世界観であるし、ギレルモ・デル・トロ監督の「パンズ・ラビリンス」からファンタジー色を一切取り除いたおどろおどろしさと言えばよいか。ジャン・ルノワール監督の「大いなる幻影」とビリー・ワイルダー監督の「サンセット大通り」のシュトロハイムからは想像できない、グロテスクな演技と存在感が素晴らしい。
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