「メタフィクションと思いきや、その展開や如何に?」オリーブの林をぬけて osmtさんの映画レビュー(感想・評価)
メタフィクションと思いきや、その展開や如何に?
前作で既にドキュメントとフィクションが融合されていたのに、そんな映画を更にメタ展開してラブストーリーなんて、
キアロスタミ本人も思いついた時には、コレはイケる!と思ったに違いない。
しかし、ストーリーは至ってシンプルなのに、撮影現場では、そのメタな設定(監督が3人=キアロスタミ+本作の監督役+前作の監督役)にスタッフ全員が割と混乱したらしい。
そして、そんな状況で描かれる恋愛事情が、現実における、まさに現在進行形ともなると、これはもう映画史上初だったのでは?
今回も、相変わらず芝居とは思えない、素人俳優たちの演技だったが、特にあの二人にとっては本作は本当に芝居どころでは無かったのだろう。
欲を言えば、印象的なベランダで鉢に水を入れるシーンが、割とあっさり流れてしまったのは、かなり勿体なかった。
あの構図は本当に美しいので、もっとじっくり見せて欲しかった。
尚、あのラストシーンで起こったことは、実際、本当の出来事だったらしい。
最初のテイクの出来が悪く、ロングショットで、二人の会話を聞けなかったキアロスタミが、本当に話をしたのか?ホセインに聞いたところ、答えがノーだったので、一晩じっくりと話し合ってみたら、ホセイン自身も驚愕するような「何か」をキアロスタミが引き出したらしく、相手の彼女の方ともキアロスタミは話し、改めて撮り直したらしい。
その「何か」は二人だけの秘密らしいが…
イヤ〜!気になる!
まあ飛び上がるくらいハッピーな事は、きっと最後に起こったのだろう。
あの引きのロングショットでホセインが必死に走って戻って来る中、ゆったり、そよ風に揺れていたオリーブの森の木々の緑が忘れられない。