「老人と犬」男と女(1966) よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
老人と犬
砂浜、海、船を捉える横へ流れるカメラワーク。
桟橋、車、老人と犬を捉えるロングショット。
これら全く物語の説明にはほとんど必要のないショットがこの映画の重要部分。男と女の話を説明するショットの合間の、これらのショットは言わば文章の行間のようなもの。つまり、これは行間を味わう映画。
夕暮れの桟橋を、犬を散歩させる老人が歩く。カメラはこれをロングでずっと追い続ける。このショットはCMやMTVのイメージに使える。1966年にこれをやってしまったクロード・ルルーシュは、時代と職業を間違えたとしか言いようがない。20年ほどで映像作家の仕事がようやく彼に追いつく。
それにしても、アヌーク・エーメの魅力には何度観てもやられてしまう。
この作品を初めて観た20代前半の私は彼女に大人の女を感じた。
それから20年経った今、私はスクリーンの中の女・アンヌよりはずいぶんと年上となった。しかし、アンヌは相変わらず自分よりも大人の女であり、その彼女を憧れの目で見つめてしまうのだ。
製作50周年を記念して、リマスターヴァージョンがこの秋公開されると聞く。アンヌにスクリーンで会えるのが楽しみで仕方がない。
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