「森林消火飛行隊」オールウェイズ odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
森林消火飛行隊
本作は1943年の「A Guy Named Joe」のリメイクです、ジョーというのは個人ではなくGIジョーのように軍人一般をさす呼称です。現代版へのリメイクにあたり主人公は軍人でなく森林消火飛行隊のパイロットに改められました、出動は戦争に似た常に生死の危険と隣り合わせという観点からでしょう。
主要プロットは死者の霊が若いパイロットや元カノの守護神になるファンタジーロマンスということでしょう、そういう意味では翌年のゴースト/ニューヨークの幻と併せゴーストもののパイオニア的作品でしょう。
ただ、そんなこととは知らずに山火事消火の航空サスペンスかと期待して観始めた冒頭からパイロットたちの馬鹿騒ぎや色恋沙汰では、今も各地で人々を恐怖に晒す大規模な山火事に対処する消防隊の話としては緊張感が無さすぎると戸惑いました。
中盤になって元カノに新しい恋人出現のくだりでは嫉妬心剥き出し、これでは守護神でなくストーカーかと落胆しましたが結末では見事な転身、まさか元カノが決死の消火に飛び立つとは、ひょっとして後追い心中かと動揺しましたが、それもこれも観客を揺さぶるスピルバーク流のドラマツルギーだったのですね。
驚いたのは神の使い役でオードーリー・ヘップバーンさんの登場、想像するにアカデミー脚本賞をとった原作脚本家はダルトン・トランボさん、そうです、彼はかの有名な「ローマの休日」のゴースト脚本家でもありますから、その縁からかもしれませんね。図らずも3年後に亡くなった彼女の遺作となってしまいました。
出来が悪いとは言いませんが緩急のバランスが今一不自然、個人的な感想としては流石の巨匠もコメディタッチの演出やラブ・ストーリーには不向きかなといった印象です。