「一風変わった人生賛歌」オール・アバウト・マイ・マザー キューブさんの映画レビュー(感想・評価)
一風変わった人生賛歌
この映画は一風変わっている。スペイン映画で登場人物も奇天烈なキャラクターばっかり。でも現実離れしている訳じゃない。アルモドバル監督はそんな彼女たちを通して素晴らしい、女性のための映画を作り上げた。
主人公のマヌエラは基本的には明るい女性である。しかし、それとは正反対に彼女はいつも息子の死から立ち直れないでもいる。彼女の周りにいる友人たちも皆ワケあり。ウマはレズビアンの大女優でヤク中の彼女に振り回されてばかり。しかもマヌエラの息子の死の原因である。シスター・ロサは尼僧なのに妊娠、しかも相手はマヌエラの元夫(今は女)でありエイズまで移されている。これだけ聞くとなんだか重い話に見えるが、ここにもう一人アグラードがいる。彼女はゲイの男娼であり、いつも男に殴られてばかり。でも最高に楽しい人物でもあり、ある意味彼女こそがこの映画の象徴とも言える。特にウマが自らの舞台に急遽出演できなくなった時に、アグラードが出演するエピソードにすべてが詰まっている。
ありがちな「お涙ちょうだい」映画みたいに無理矢理涙を誘うわけではない。楽しさの裏に悲しみを潜ませながら、それを打破しようとする女性達への人生賛歌なのだ。
(11年4月4日)
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