「続編にしてはやるね。」エイリアン2 TRINITY:The Righthanded Devilさんの映画レビュー(感想・評価)
続編にしてはやるね。
リドリー・スコット監督の大ヒットSFホラー『エイリアン』(1979)の続編を『ターミネーター』(1984)のジェームズ・キャメロンが監督。脚本も彼が担当している。
R・スコットは最近になって続編を他人に任せた事を後悔していると発言したとか。その際、具体的な名前を出したかは把握していないが、いずれにせよJ・キャメロンの解釈や演出に不満があると言いたいのだろう。
SFでありながらゴシックホラーのような印象の前作でフェイス・ハガー、チェスト・バスターと姿を変えながら、なかなか実体を現さないエイリアンには中世の古城に潜む吸血鬼をも連想させるが、一方でその容姿や生態は既存のどんな生命体とも相容れない存在。
しかしキャメロンはエイリアン・クイーンを登場させることでエイリアンを蟻や蜂のような既知の生態を持つ存在に置き換え、更には派手な戦闘シーンを伴うSFアクションへと作品を変質させたうえ、前作では言及されなかった種族名ゼノモーフ(何度も観てるが、本作でこの言葉が使われていることを今回初めて認識)を用いるなど、遠慮なくシリーズの世界観や基本設定を上書き。
それだけでもスコット監督が気分を害する理由に値するのに、前作ではファイナルガールに過ぎない受動的な存在だったリプリーをみずから望んで困難に立ち向かう自立した母性の持ち主へと変容させている点は『ターミネーター2』(1991)のサラ・コナーの設定にそのまま転用されている。
『エイリアン』の続篇で『ターミネーター』の続篇のリハーサルをやられたとスコット監督が感じたとしたら当然のことだと思うし、アンドロイド・アッシュの機種がハイパーダインシステム120-A/2なのも、「ほんとはサイバーダイン社製にしたかったんじゃ」と、意地の悪い想像を巡らしたくなる。
ただ、スコット監督のフランチャイズを荒らすことになったキャメロン監督も『ターミネーター』の資金繰りで作品の権利の多くを手放したばかりに、自身の意に添わぬかたちでシリーズ3作目が作られる羽目に。
スコット監督の気持ちも分からないではないが、「大目に見てあげなよ」という気もする。
本作が成功したのは新機軸をうち立てたキャメロン監督の発想や技量もさることながら、リプリーを演じたシガニー・ウィーバーの存在があればこそ。
今なお派生作品が次々作られるが、初期シリーズほどの感銘が得られないのは、それらがもはや『エレン・リプリー物語』ではなくなっているからだと自分は思う。
キャメロン監督の下積み時代からの盟友ランス・ヘンリクセンは『ターミネーター』の主役の座をアーノルド・シュワルツェネッガーに譲った論功行賞からか、本作では善良なアンドロイド、ビショップ役に抜擢。シリーズの準レギュラーに。
前作でも見られた爆破タイマーの設定時間よりも先に小規模爆発が起こる場面にはリアリティを感じないが、そんなことを差し引いてもよくできた傑作。かつては「映画史上もっとも成功した続篇」と評価されていたことも。
ジョンジーだってきっと「続編にしちゃ、大でき大でき」と誉めてる筈?!
NHKーBSにて視聴。
一作目を抜かして本作だけ放送したのは、最近作品が被りまくりの「午前十時の映画祭」に配慮したからか。ひょっとしてクレーム来ちゃった?