「格調高いスコセッシ作品」エイジ・オブ・イノセンス 汚れなき情事 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
格調高いスコセッシ作品
総合80点 ( ストーリー:80点|キャスト:80点|演出:75点|ビジュアル:80点|音楽:75点 )
冒頭はかなり説明的で状況を知らせようとしてくれるのだが、登場人物が多くて相関関係を把握するのに苦労した。
古い上流階級のしきたりと柵に縛られて上手くいかない2人の無垢な純愛が格調高く描かれていた。そんな社会を逸脱することも出来ないままに結局30年も遠く離れて別々に生きていった想いが、もう戻れない儚い物になったと思い知らされるのが寂しく哀しい。なかなか進まない物語に途中でちょっと退屈もあったし、時間の経過と場所の移動についての説明が少なくて分り辛さもあった。しかし本当の心を秘めて生きていった哀愁が伝わってきて余韻が残った。
主演のニューランド役のダニエル・デイ・ルイスはいい演技だった。相手役エレンを演じたミシェル・ファイファーも悪いわけではなかったが、妻のメイ役のウィノナ・ライダーが強く印象に残った。彼女は上流階級の枠の中で平凡に生きている世間知らずな無垢の女のように見えて、実は鋭い感性で夫の本心を知り、それを実は上手く制御していた。妊娠のことを夫よりも先にメイに伝えて彼女の欧州行きを促しているなんてたいした策士だった。彼女は出しゃばらないように目立たないようにでも自分の力で自分の欲しいものを手に入れ、そして策に溺れることもなく強欲に走ることもなく平凡に幸せを手に入れ全うした。ニューランドの寂しさの裏にはメイの幸せがあった。
メイの死でやっと解放されたニューランドには、もう取り戻せない遠い過去だけが残っていた。主人公たちの人生を変えたのはメイであり、実は彼女が影の主人公だった。
激しい描写で有名なスコセッシ監督だが、本作ではかなり控えめで静かな演出で格調高さを見せた。しかしその裏で蠢く上流社会の人の悪意や思惑を織込んでいた。
映像は綺麗で、衣装と建物といった美術が凝っている。それに加えて美しく格調高く撮影しようとする美的感覚に注力しているのがわかる。