劇場公開日 2025年8月23日

「冷えた鉄と石で撮った映画」動くな、死ね、甦れ! La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)

未評価 冷えた鉄と石で撮った映画

2025年9月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 頭でっかちの中二病のマニアが撮ったお芸術映画のタイトルに感じ、気おくれして、当初は観る気がありませんでした。しかし、ザラザラした肌触りのモノクロ予告編が強く印象に残ったので、恐る恐る映画館に足を運びました。

 終戦後間もないと思えるソ連極東の寒村が舞台です。抑留された日本兵や、スターリンの粛清にあった知識人らが集められた極貧の炭鉱の毎日を描いています。彼らが、今日一日を生きるためにのたうち回っている姿が続きます。それは、監督が幼い頃に見た光景なのだそうで、また、無実の罪で獄に8年間繋がれていたと云われる監督の沈潜した思いの詰まった日常なのです。

 主役を演じ、尋常ならざる眼光の少年は、ストリート・チルドレンとして暮らしているところをスカウトされたのだそうです。少年でありながら、我々に不快感と共に強い魅力を感じさせるのも、その生い立ちがあればこそなのでしょう。

 この少年だけでなく、映画そのものが乱暴で粗野で投げやりです。泥を丸めた団子を作って「さあ、食え」と突き出された様な思いがします。或いは、鉄と石で映画を作ったらこんなのが出来ましたと云えばよいでしょうか。遣り場のないエネルギーに溢れているのに、なぜかちっとも熱くなく、「冷えた灼熱の炎」とすら感じます。

 その一方で、「この監督はこの様にしか撮れなかったんだろう」と云う事が深く納得できます。それがよかったのかどうかは分かりません。ただ、僕なんかがどう評そうが、唾を引っ掛けられるだけ・・ そんな風な映画でした。これは参ったな。

  2017/11月 鑑賞

La Strada