劇場公開日 2019年9月27日

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「西部劇の終焉はイタリア人が作った」ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト こめちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 西部劇の終焉はイタリア人が作った

2025年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

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 ジョンウエインとジョンフォードらの作った西部劇が陰りを見せたとき、イタリアが西部劇(マカロニウエスタン)を作った。それはアウトローが金と復讐のために、ほこりだらけ汗だらけの髭ずらのむさい悪党を倒す物だった。このようなリアルで残酷な感覚は、実はヒットした荒野の用心棒のように黒澤明の用心棒から来ている。黒澤明はジョンフォードの西部劇を愛して、日本映画にウエスタンの味付けをした。しかし、黒澤明の非凡なところは単なる西部劇の焼き直しではなく、人の描写や戦い方にリアリズムを取り入れた。それが再びウエスタンとしてよみがえった。アメリカの西部劇にイタリア製西部劇がリアリズムと外連味(けれん味)の新風を吹き込んだ。
 この映画は荒野の七人で現れ、様々なアクションで角頭を表したチャールズブロンソンがアメリカの西部劇のスターヘンリーフォンダやジェイソンロバーツと対峙し、最後はヘンリーフォンダを倒すというそれまでにない最後だった。この三人は機関車が走る最早時代遅れのガンマンで、開発の進む地主の未亡人に出会う。基本はイタリア西部劇に多い復讐話だ。しかし、最後の対決は銃を落とした後倒れるヘンリーフォンダの悲しげな青い目が、まぶしい青い空の下でなんとももの悲しく、現在ほとんどの出演者がこの世を去っていることもあって寂しさが募る。未亡人も悲しみから自立しようとしている。心に響くエンリォモリコーネの音楽が美しい。ヘンリーフォンダが悪役で寂しげに終るこのアメリカの西部劇にない感覚は、アメリカではヒットせず、ヨーロッパや日本でヒットした理由だろう。アメリカの西部劇の時代が終ったのである。それ以来西部劇はリアルと厳しさを中心に時々作られている。映画は結局全てリアリズムに向かっていくのだろう。

こめちゃん