劇場公開日 1985年8月3日

「独立の際に果たせなかった英国人とインド人の和解に重ね合わせたか…」インドへの道 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0独立の際に果たせなかった英国人とインド人の和解に重ね合わせたか…

2023年2月22日
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鑑賞方法:DVD/BD

1985年のロードショー以来の鑑賞だろうか、
ヒロインの特異な性的欲情が
事件を引き起こすとの点や、
支配・被支配の環境での出来事との設定は、
まるで前作の「ライアンの娘」の舞台を
インドに置き替えたような展開には
改めて驚かされた。

しかし、最後のインド人医師のヒロインへの
手紙の意味が良く分からなかった。
よもや彼の暴行が実際にあって、
ヒロインが裁判の途中で彼を救うために
翻意したことへの“許しを請う”だったと
一瞬邪推したが、
しかし、やはり、ヒロインが経験した
神秘の国での性的な興奮からの妄想事件
であって、
それ故の裁判での告訴取り下げの勇気に
対してなのだろうと思い直した。
そして、それは、
彼を理解した老婦人への想いもあって、
彼が裁判後にヒロインを
“許さなかったことへの許しの請い”
だったのだろうか。

そして、この登場人物の相関を、
デビッド・リーン監督が
インドの英国からの独立に際しての、
充分には果たせなかった両国民の和解に
重ね合わせようとしたように
思ってもみたが。

巨匠リーン監督の最後の作品ではあるが、
私には、彼特有の
完璧な映像とストーリー展開も
14年のブランクのためか、
その完璧さが影を潜めてしまったような
ぎこちなさを感じる作風で、
残念ながら前作までの
「旅情」~「ライアンの娘」の5作品を
超えるまではいかなかったように思えた。

KENZO一級建築士事務所