イル・ポスティーノのレビュー・感想・評価
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地中海の強い日差しと抜けるような青い空と海はもう一つの主役
『イル・ポスティーノ 4Kデジタル・リマスター版』
製作30周年を記念して4Kデジタル映像になって11月8日(金)からリバイバル上映。
早速、角川シネマ有楽町さんにて鑑賞。
日本での公開は1996年の春。劇場での鑑賞は実に28年ぶり。
『ニュー・シネマ・パラダイス』(1988)のアルフレード役で知られるフィリップ・ノワレの最新作と知って劇場に足を運んだ記憶がありますね。
高名な詩人パプロ・ネルーダ(演:フィリップ・ノワレ)と内気で実直な配達人マリオ・ルオッポロ(演:マッシモ・トロイージ)の日々の交流から徐々に縮まる二人の距離感、パプロに感化され詩作に目覚め、才能を開花させていく過程が丁寧に描かれていますね。
フィリップ・ノワレの愛嬌と包容力ある演技は素晴らしいのですが、脚本兼主演のマッシモ・トロイージは撮了後わずか12時間後に41歳で逝去、精細な演技の方だっただけにもっと出演作を観たかったですね。
マリオの恋人役ベアトリーチェ・ルッソを演じたマリア・グラツィア・クチノッタは、ソフィア・ローレン、モニカ・ベルッチのような典型的なイタリア美人。その後『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』(1999)にも敵役で出演していましたが、もっと活躍して欲しかったですね。
そして、地中海の強い日差しと抜けるような青い空と海はもう一つの主役、同作品のビジュアル面に大きく寄与していましたね。
改めて見直すとイタリア映画で大戦後盛んになった「ネオレアリズモ(=イタリアのネオリアリズム)」を踏襲、労働者の要求、市民の暴動といった側面も描いているのは再発見でしたね。そういう部分でも本作が永くイタリアで愛される所以かもしれないですね。
これは実話なのか、それとも創作なのか。
世界一幸せなアラフォーのシンデレラボーイの恩返し
1948年に 国外退去処分 となり、イタリアに亡命し、ナポリ沖の小島の別荘にやってきたチリの政治家、外交官で世界的に有名な詩人でもあるパブロ·ネルーダ (フィリップ・ノワレ) 。のちにノーベル文学賞受賞。カプリ島で出会った郵便局員の男との実話に基づく1994の映画。今回、4Kデシタルリマスター版で劇場鑑賞。
郵便局員のマリオ(マッシモ・トロイージ)は生来体が弱く、内気で普通の仕事につけないでいる不思議なおじちゃん。年取った漁師の父親と二人暮らし。お父さん役に顔がそっくり。体が弱いというよりも、多少オツムが弱い美青年(アドニス)のマリオ。鼻にかかってこもりがちなトーンの声も魅力的。映画館のニュースで世界的詩人が自分の島にやってくることを知る。配達員募集の張り紙を見て、小さな郵便局を訪れる。世界中からファンレターや贈り物が届くパブロ専任の配達夫として臨時採用となる。郵便所長(共産党員)が親切でいい人。彼とマリオのやりとりにまずはニヤニヤほっこり。美人の奥さんを連れて、芸術家が作ったアトリエ風の高台の別荘。自転車で登ってくるのはとても大変そう。その分周りを海に囲まれた絶景は格別でした。
大戦後のチリの政治混乱についてはよくわかりませんが、1948年から1958年まで国外退去処分だったようです。映画の色彩がほんとに古い感じで、1960年前後の映画のようで役者さんのメイクなんかも雰囲気があります。主演のマッシモ・トロイージは撮影終了後ほどなくしてなくなったそうですね。脚本にもかかわった彼は、実際に心臓が悪く、撮影も休み休みだったそうです。自転車漕ぐだけで大変だったでしょうに。命と引き換えに撮った映画です。泣けますね。
居酒屋兼食堂の娘、ベアトリーチェ·ロッソに一目惚れし、オクテの彼はパブロに相談します。パブロの詩は
エッチな比喩や隠喩に優れ、官能的でややお下品ながら、とても情熱的なので、世界中の年頃の娘さんにはとても刺激的だったに違いありません。コーチが良かったせいで、マリオは島一番のグラマー美女(決して乙女には見えませんが)といい仲になり、結婚することに。
アラフォーのシンデレラボーイ。
夢のようです。
ワタシもあやかりたい。
カプリ島は古くからレモンの名産地で有名らしいです。
詩がとても力を持っていた時代。
あの録音機(再生機能つき)。送られてきたカセットを押し込むのは昔のカラオケみたい。当時、実在したものなのかは大変疑問ですが、マリオとパブロにとって、とても大事で重要な役割を担う仕掛けでした。郵便局長が野外の録音をサポートするのもとてもいいです。当時の集音マイクで胎児の心音が録音出来るのかは横に置いといて、
「この島で一番美しいのは······ベアトリーチェ ロッソ」
パブロとマリオの噛み合わないようで、ちゃんと噛み合っている会話は、時折とても可笑しい。
大学の部室でひとりでカセットテープに弾き語りを録音してたら、マツイ君がいきなり入ってきて、サビをハモった声が入っているテープは何度聴いても可笑しいので、上書きして消すことなく大事にとってあります。
金沢出身の映画好きの松井君。元気にしてますか?
のどかで美しい南イタリアの島を舞台に…
翼を持って羽ばたく言葉
この映画があまりに好きになってしまった。「グラディエーターⅡ」見てからまた見に行った。再発見が沢山あった(2024.11.15.)
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しどろもどろにボソボソ話すマリオ、頼りなくて大丈夫?職なしの彼が一時的に郵便配達の仕事を得た。食事中も郵便配達人の帽子被ってるのを、頭の形に帽子を合わせないと頭が痛くなるからと漁師である父親に言い訳するところが妙に可笑しくて可愛いくて笑えた。マリオによれば父親も無口、全く話さない。それがマリオの結婚パーティーで父親は幸せいっぱいの言葉で流暢にスピーチをした。驚きいっぱい!
最初はパブロも自分の為だけの郵便配達人マリオに素っ気なく、マリオは相変わらずもじもじしている。でもパブロの詩集を買って読むようになってマリオの顔が変わってくる!思索する顔、隠喩って何?これ?あれ?語彙が増えていく。ベアトリーチェに恋をしてからは頭の中はベアトリーチェでいっぱい!どんくさかったマリオが見る見るうちにかっこいいハンサムな男に変わっていく!奇跡のようだった。ぼそぼそ話すマリオはもう居ない。かなり親しくなっていたパブロに、恋におちたこと、メタファーなんかを自分に教えたあなたにも責任があるのだから力を借してくれと言い出す。恋の力はすごい。
パブロが詩を書きながら、どんな形容詞がいいかマリオに尋ねマリオが答えるシーンが好きだ。「魚を採る網は?」にマリオは言う「悲しい」。パブロの詩をマリオがベアトリーチェへのラブレターに使ったことをパブロに言われて「詩はその詩を書いた人のものでなくて、その詩を必要としている人のものだ」と言い返すところは見事、その通りだ!マリオはパブロから言葉やメタファーだけでなく考え方も吸収した。
たとえ落胆したとしてもパブロのことを忘れない、感謝しかしないマリオがあまりに健気で真面目で涙がこぼれた。郵便局長の助けを借りて、パブロへの音のプレゼントを作る:海のさざ波、大きな波、父親の悲しい魚の網、茂みに吹く風の音、教会の鐘の音、ベアトリーチェのお腹をパブロが置いていった機器で録音する。自分の言葉でナンバリングとタイトル付けをして、優しい感謝のメッセージと共に美しい島とこれから生まれる我が子の心音を残した。
誰にでもお勧めできる名作です
名作と言われているだけあって、やはり素晴らしかった 景色も人も、描...
名作と言われているだけあって、やはり素晴らしかった
景色も人も、描きたかの統一感とか
上手く言えないけどそれぞれが似合ってた
郵便配達人と一時滞在してる人の話、ってくらいしか知らなかったけど、
いわゆる「生きづらい人」の話だったんですね
そんな彼でもそこがクローズアップされる訳でなく、
楽しく働けて幸せな人生を過ごせて良かったです
あたたかくて優しい気持ちになれる作品でした
主人公の俳優さん、他の作品には何に出たんだろうかと調べたら、
心臓手術を延期してこの作品の撮影に臨み、
撮影終了の12時間後に死亡って知ってびっくりでした
残念ではあるけれど、普通に治療しててもあと何本出られたか分からないし、
後世に残る作品に出られたのだから良かったですね、でいいですかね
詩的美
四半世紀ほど前に観たときは、実に退屈な映画だと思いました。「どこで盛り上がるんだろうと思ってるうちに終わってしまい、眠くなっちゃったよ」と当時、一緒に観た妻に話した覚えがあります。「どうしてこれが名作なのか?」以来、ずっと心の片隅にあって、いつかもう一度観ようと思いながら、ついつい先延ばしにしてきました。今回、意を決して注意深く観てみれば、無駄なシーンなどどこにもなく、すべてのシーンに登場人物たちの苦悩や熱い思いが描かれていて、すっかり魅入ってしまいました。漁師になりたくない主人公マリオ(マッシモ・トロイージ)が郵便局の仕事に就き、チリから亡命してきた偉大な詩人パブロ・ネルーダ(フィリップ・ノワレ)と交流することで詩を書くことを覚えるそのやりとりが人生におけるかけがえのない美しい時間であり、その詩で島一番美しいと噂される女性ベアトリーチェ(マリア・グラツィア・クチノッタ)を口説いてしまう展開はまるでお伽噺のようです。結婚披露宴では無口な父親が嬉しそうに長~いスピーチをするシーンにはクスッと笑いながら、熱いものが込み上げてきました。島人たちの暮しや美しい風景など、全編が美しい詩のようで見所に溢れていました。詩の意味について説明を求めるマリオに対するパブロの解釈も本当にすばらしく、よく練られた台詞が素敵でした。今観ると、やはりマリオ役のマッシモ・トロイージの素朴な雰囲気がこの作品のベースになっていて、彼の思いを受け止める偉大な詩人パブロに扮するフィリップ・ノワレの存在感が非常に重要かつ難しい役どころのように思えました。重い心臓病を煩いながら撮影を続けたマッシモ・トロイージが撮影終了後すぐに亡くなったこと、フィリップ・ノワレが「ニュー・シネマ・パラダイス」(88)のアルフレードであることなども、見終えたあとの感動をさらに深めてくれたように思います。「今度はすごく感動した!」と涙ながらに妻に言ったら、「当時、何故つまらないと言ってるかがわからなかった」と笑ってました(苦笑)。
余計な情報が作品性を損なう
主演の、配達人役のマッシモ・トロイージはこれが遺作になったということを聞き、感動のハードルが上がってしまった。
知らずに見ていたら気にならないレベルだったと思いますが、とにかくしんどそうに動くんですよ。マッシモ・トロイージが。
恋人役の女優さんも、無駄にエロチックで、感動の方向性とは、やや違った方向に作品の評価は行ってしまったと思いました。
ことさらに「泣ける」を強調されると、こういう結果になりがちですね。
2017.5.4
タイトルなし
期待していたがそれほど感動せず。主人公にそれほど魅力を感じなかった。もっと若い人が演じれば違ったかもしれない。偉大な詩人を通して青年?が成長していくストーリー。ラストには亡くなっている。
美しいイタリアの島
大昔に観てなんとなくよかった映画、を再確認するべく再鑑賞。
良かった。
美しいイタリアの島に、突如降り立った偉大なる詩人ドン・パブロ。
仕事もなくパッとしないマリオの人生を、詩人が大きく変えることとなる。
詩人がチリに帰国して数年、残念ながら2人の再会は叶わなかったけれども、詩人は島を、マリオを、忘れてはおらず、マリオもそうと信じてた。2人の間にあった絆の深さと、素朴で美しい島の風景がじんわり絡み、心に残ります。
普段、詩にはあまり触れることもなかったけれども、ドン・パブロのわかりやすいレクチャーのおかげで、ちょっと興味が湧いてきました。なんか読んでみよう。
詩人と郵便配達人の友情を美しい自然と共鳴させた繊細なイタリア映画
南イタリアの寂れた漁村に祖国チリを追われた詩人が訪れることから始まる、詩人と郵便配達人の詩作を通して結ばれる友情の物語。マッシモ・トロイージの素人らしい飾り気のない素の演技とフィリップ・ノワレの老練な演技のアンバランスな趣が、二人の立場を返って浮き上がらせて面白い。予測しにくいストーリー展開で進む物語の新鮮さもあり、最後まで興味深く観ることが出来る。ただ、脚本が意図する部分の多くが、主人公ふたりの共産主義に起因するものであり、主人公の死を共産党大会の詩の朗読に持っていく結末は、政治色が強すぎる。それだけ孤独な若者の純真さや可笑しさに親しみを覚えただけに、そこに政治思想的判断が介入する必要性を感じなかった。
恋人の叔母が詩の解釈をめぐり詩人ノワレと対等に会話するエピソードは可笑しく、詩人と主人公の師弟関係の会話の内容も分かり易くて面白い。そして、ラストの自然の音を録音するシーンの繊細な映画タッチなど特筆すべきものがある。無教養な田舎の若者が、村一番の美女と結婚し子供まで儲ける幸せな人生。妻になる女性が何故惚れてしまったのか説明不足かも知れないが、主人公の純真さは一際溢れていた。ラストシーンのノワレの表情は、観る者の思いを代弁して余りある。
イタリア映画のあたたかさと残酷さ
まさにイタリア映画。雰囲気、景色、なんとも言えないあたたかさと残酷さ。
純粋なマリオが愛おしいキャラクター。ネルーダに影響を受けつつ、彼が去ったあとも彼に心酔するというわけではなく、忘れられたように思えても彼に感謝し続ける姿が良かった。
波の音や教会の鐘、夜空、お腹の子供の音など、島のきれいなものを録音するのが素敵だった。
涙が止まらない・・・
まずは地中海に面した島の風光明媚なところに心奪われる。漁業メインの小島。水道すら引いてなく、月1回くる給水船が頼り。そんな静かな村だから若者も少ないのだろうか・・・
映画館のニュースで見たパブロ・ネルーダ。彼が女性に人気だということも気になるマリオは憧れてしまう。パブロも共産党員、郵便局長も共産党員、いつしかマリオも共産党を名乗っているほどだけど、政治色はほとんどない。
一軒だけの郵便配達。週に1回映画が観れる程度の給料じゃ大変だろうに・・・と思いつつも、毎日配達し、詩について学んだことはかけがいのない財産。隠喩という言葉がそのままコミカルに使われているところも面白い。
島で一番美しいのは・・・ベアトリーチェ・ルッソ!君の笑顔は蝶のように広がる。印象に残る台詞ば多いけど、映画全体に渡ってそのまま詩だったようにも感じてしまう。
マリオとベアトリーチェの結婚後、島を去ったパブロ。どの記事を読んでも島の人のことに触れてない。寂しい思いもあったけど、第二の故郷のように感じていたことは間違いないのだろう。
残された録音されたマリオの詩。そして、自然をそのまま音で表現しようと集めた苦労も伝わってくる・・・個人的な思い出もあるし、なぜかこのエピソードが一番好きだ。
エンドロールに亡きマッシモに捧ぐ・・・などと書かれると涙が止まらなくなる。病気に蝕まれながらも製作にこぎつけたという執念はすごい。
憧れと裏切りの狭間で揺れる男心。
笑いと感動!という決まり文句に相応しい
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