「本作で描かれたデイストピア社会は既にそれ以上の酷さで実在している それが我々の生きている21世紀だ」1984 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
本作で描かれたデイストピア社会は既にそれ以上の酷さで実在している それが我々の生きている21世紀だ
原作は1949年に刊行された35年後の世界を描く小説
本作はその35年後の題名通りの1984年に製作された
あり得ない空想の中のデイストピア社会
当時の共産圏の政治状況を誇張して皮肉り非難するものであった
現実の1984年はソ連がこのような社会であり、その数年後に崩壊した
そして今私達はそこから更に35年後の21世紀の世界に生きている
北朝鮮はこれ以上のデイストピアだ
本作に描かれたそれを上回るものが地上に存在してしまっている
そして核兵器まで手にしているのだ
そして中国はどうか?
本作の描く社会以上の高度な技術を用いたデイストピア社会が出来つつある
ネットでの発言は厳しくチェックされ外国からの異なる考えは遮断されているのだ
さらにはテクノロジーを駆使した信用スコアなるものを作り出し十数億もの人民の思想統制を現実化しているのだ
もはや現実に中国共産党に逆らう思想を書籍やマスコミやネットで発表する自由はない
それどころか人知れず逮捕され社会から抹殺されているのだ
現実に無数の人々が本作の主人公のような末路を辿っている
本作の終盤長く続く思考警察の拷問はチベットやウイグルにおける「職業訓練所」そのものだ
日本はどうなのか?
我々は隣国でそのような恐ろしい事が進行しているにもかかわらず、それを食い止めることも出来ずにマスコミという思考警察に支配されいる
彼らの操るニュースピークのニュースでのみ彼らの都合の良い内容で知らされ、我々は無知のままにおかれている
2+2は4ではないと言う報道ばかり、我々は聞かされているのではないだろうか?
本作の冒頭に文言がでる
過去を支配するものは未来を支配する
デイストピアが世界を制する未来は、現実に今そこまで来ている
空想でも誇張でもない
それ以上にITを駆使したシステムとして我々を呑み込もうしている
本作以上のデイストピアは現実に実在して我々の自由に挑戦しようとしているのだ
それもすぐ隣国で
つまり本作は文字通り今現在起こっている事なのだ
本作は1956年製作の同名映画のリメイクだ
そちらは日本では劇場未公開のため本サイトではエントリがないが、合わせて観ておきたい
白黒ではあるがより暗澹たる雰囲気が強調されている
特にラストシーンの洗脳された主人公がビッグブラザー万歳を叫ぶシーンは記憶に残るものだ
また1956年版のテレスクリーンの家庭版は壁に取り付けられているが、その形状や機能はスマートスピーカーそのものでり戦慄を覚えた