「有名小説が遺した特殊な空気感を、丁寧に翻案し映像化した逸品」1984 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
有名小説が遺した特殊な空気感を、丁寧に翻案し映像化した逸品
ジョージ・オーウェルが著した伝説的なディストピア小説を、物語の舞台「1984年」に映画化した作品。冒頭から劇場のような場所でプロパガンダ映像が映し出され、あの伝説的な「二分間憎悪」も描かれる。かくしてボルテージが一気に上昇した後、物語は主人公のの淡々とした個の視点へと移ろい、彼が抱く日々の違和感や、体制に隠れて「日記をつける」「愛し合う」といった行為を描いていくのだが・・・。
よくある「原作もの」のようにストーリーラインを丁寧に辿るのではなく、あくまで主人公の意識の流れに即して進んでいくので、原作を知らないとやや難解に思える向きもあるかも。その代わり、これほど原作の空気感を周到に表現し得たことは評価に値する。とりわけ主人公が彷彿する少年の日の原風景が胸に突き刺さってやまない。暗雲たる世界観や小道具の作り込み、そしてジョン・ハートのみならず、名優バートンの最期の演技が拝めることも感慨深い。
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