劇場公開日 1963年1月2日

「ジョン・フォード監督の傑作」怒りの葡萄 たいちぃさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ジョン・フォード監督の傑作

2022年10月23日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

初見は、学生時代(1979年7月27日)、新宿アートビレッジで鑑賞。(『市民ケーン』との2本立て)
本日(2022年10月23日)、43年ぶりに鑑賞。

学生時代は「酷な労働環境」を見てツラい気持ちが残っただけに思えていたが、改めて見直すと「人間愛に溢れた傑作」であった。

ある男が歩いている。彼はトム・ジョード(ヘンリー・フォンダ)、トラック運転手に頼んで便乗させてもらう。運転手はトムの素性に探りを入れると、トムは「俺は刑務所にいたんだ。人殺しで…」と実家近くでトラックを降りる。
トムは元牧師だったケーシー(ジョン・キャラダイン)と会い、仮出所だと話す。そして、ケーシーと一緒に実家に辿り着くが、実家はもぬけの殻。家族は先祖代々の土地を捨てて、凶作で土地会社に土地を奪われ、叔父の家に行っていた。そこで、トムは母親(ジェーン・ダーウェル)と再会。トムを含めてジョード一家は「仕事のあるカリフォルニア」を目指して、オクラホマからカリフォルニアへのオンボロトラックでの旅を始める。
希望を抱きながら、カリフォルニアを目指す家族だが、途中でじい様が亡くなり家族で葬り、実際にカリフォルニアで辛い目にあった男から厳しい現実を話されて不安になる家族だが、やはりカリフォルニアを目指してトラックを走らせるのだが……。

記載したいエピソードは多数あるが、書ききれないので、印象的なところだけ…。

旅の途中、カフェでパンを買いたい父親が「10セントでパンが欲しいのだが…」と言うと、彼らの様子を見た店主は「じゃあ、出してやれ」と店員(妻?)に言うのだが、その女性は「15セントよ!」と厳しい。それでも店主が「10セントでいいから渡してやれ」と言ってパンを渡す。子供2人にキャンデーを買ってやりたくなった父親が「これはいくら?」と女性に確認すると「2つで1セント」と言って、父親は買っていくのだが、彼らが出て行った後、実はもっと高かったことを話す客。
愛情あふれる場面で、感動で心震えた。

いろいろとツラい事がトムを含めたジョード一家に降りかかるが、力強く生きていこうとする彼ら、特にトムの母親を演じたジェーン・ダーウェルの「以前だったらダメだったけど、いろんな事の後だから前向きになれるのが女性なのよ」的な言葉が素晴らしい!
本作で、アカデミー助演女優賞を獲るだけある見事な存在。

全編を通じて、アチコチで感動させられるジョン・フォード監督による傑作!

コメントする
たいちぃ