家と世界
劇場公開日:1986年10月18日
解説
今世紀初頭のベンガルの民族運動を背景に、理想主義者の地主の姿を友人と妻との葛藤をからめて描く。ノーベル賞詩人として知られるラビンドラナート・タゴールの原作を基に「遠い道(1981)」のサタジット・レイが監督。撮影はショーメンドゥ・ロイ、編集はドゥラル・ドット、美術はオショク・ボースが担当。出演はショーミットロ・チャタージ、ヴィクター・バナルジなど。
1984年製作/139分/インド
原題または英題:Ghare-Baire
配給:東宝東和
劇場公開日:1986年10月18日
ストーリー
ビマラ(シャティレカ・チャタージ)は、10年前、古くからシックシャルの村の領主だった名門の家に嫁いで来た。夫のニキル(ヴィクター・バナルジ)は、温厚で高潔な人物で、高い教育を受けていた。彼はビマラを自分でものを考えられる自由な女に育てあげたいと願っていた。ヒンズー教独特の押さえつけるような厳しいしつけを受けてきたビマラにとっては、西洋の流儀を強要されるのは時として戸惑いともなったが彼を満足させるために受け入れていた。しかし、聡明なビマラは、家庭教師ミス・ギルビー(ジェニファー・カプール)によって西洋文化に親しむようになり、夫の説く進歩的な考え方を理解できるようになった。時は、ベンガル分割令が敷かれて間もない頃、この露骨な帝国主義的植民地政策に、インドのインテリ層は反旗をひるがえし、過激なテロ行為などの運動が頻発した。ニキルの大学時代の親友ションディブ(ショーミットロ・チャタージ)は、こうした民族運動の指導者のひとりだった。ニキルは、彼に金銭的援助を惜しまず、この地方にやってくるションディブを客として館に招いた。ある日、ミス・ギルビーが投石を受け帰国し、入れかわるようにやって来たションディブが、演説を行う姿を、ビマラは奥の間から見ていた。初めて表の部屋に出たビマラ。彼女に会ったションディブは、ビマラの因習に捉われない情熱的な仕草と言葉に惹かれるものを感じた。ションディブからたびたび呼び出しのメモが届くようになり、奥の間の女たちの非難と嫉妬を感じながらも会いに行くビマラ。スワデシ運動に同調し外国製品をボイコットする地主が多い中でそれを拒否していたニキルを何とか説得して欲しいというのが、ションディブのビマラへの頼みごとだったが、同時に彼女への欲望もそこにはあった。遠ざかってゆく妻の心に気づきながらも、どうすることもできないニキルの苦悩の日々がはじまった。遂にションディブのために五千ルピーという金銭を金庫から盗んだビマラは、金を渡した時から、彼の心の内を見たような気がして血の気が引いた。その金は、外国製品が市に出るのを阻止するための賄賂であった。ションディブの信奉者で以前よりビマラを敬愛していた17歳のオムッロ(インドロプロミト・ラエ)もションディブに失望し、ビマラに同情し協力する。自分の浅はかさを悔むビマラを、ニキルは許し、明日になったら兄嫁(ゴバ・アイチ)と3人でカルカッタに避難しようと、やさしい言葉をかけた。そんな矢先、人々を鎮めるためにニキルが夜、出かけた。やがて暴動の火の中、一発の銃声が響いた。翌日、ニキルの葬式が行なわれ、ビマラは白い布をまとう寡婦となるのだった。
スタッフ・キャスト
受賞歴
第37回 カンヌ国際映画祭(1984年)
出品
コンペティション部門 | |
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出品作品 | サタジット・レイ |