「遅れて来た名作」ある日どこかで odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
遅れて来た名作
原作者のリチャード・マシスンは旅先のオペラハウスに飾られていた女優(Maude Adams)の写真に魅了され、時空を超越したラブストーリー(Bid Time Return)を思いつきました。
ただ、片想いなら勝手でしょうが再会までの60年間彼女がどんな思いで生きて来たか、その残酷な年月を思うと結果償うにしても男目線の身勝手なストーリにも思えます。思い通りに行かないのが人生とすればせめて映画の中くらいは夢を叶えて欲しいという観客と悲しいときには悲しい映画の方が慰めになるとか、涙は心のデドックスという人もいるでしょう、評価は自身の時々の心の鏡のような気もします。
SF作家なのですが、興を削ぐのでマシン類は使いたくなかったし、魔法では子供だましになるので自己催眠法なるものを編み出したのでしょう、これとて無理があるのは百も承知、大学教授に言わせることで妙な箔をつけ、あとは映像、音楽のマジックで見事に物語に引きこんでくれました、余りほじくるのは野暮と言うものでしょう。
主人公がタイムトラベル前に古銭屋で両替する用意周到さと思ったらこれが伏線だったとは・・。お金で人生が変わるというのは大袈裟ですがコイントスで勝敗が別れることもあるというメタファーでしょうか。
主人公を虜にする一枚の写真、この物語が成立するか否かはこの写真にかかっていたと言っても過言ではないでしょう、エリーゼを演じたジェーン・シーモアはオーディションで選ばれたそうですが納得です。猫ちゃんのようなオッドアイ(茶と緑)を持つ神秘的な女優さんです。
プロデューサーのスティーブン・サイモンは原作に惚れ込んで映画化権を買ったものの脚本を読んだ幹部からこんなメロドラマ当たる訳がないと頓挫した、監督のヤノット・シュワルツが掛け合って許可が出たものの予算が半減させられたそうです。監督はジョーズ映画、主役はスーパーマン、彼女はボンドガールとこの種の映画には向きそうもない人達ですがそこが良かったのでしょう、芸域を広げるチャンス、チャレンジ魂に火が付いたのでしょう、007のテーマ曲でも有名な巨匠ジョン・バリーはジェーン・シーモアが頼み込んだようです。予算がないのでキャスト、スタッフはグランド・ホテルには泊まれず、近所の宗教団体の建物で寄宿舎生活を強いられたようですが脚本に惚れ込んだ仲間同士を中心に絆のようなものが高まったというから素晴らしい人達ですね。映画興行は不発だったようですがテレビ放映やビデオで火が付きコアなファンが大勢いるという遅れて来た名作になりました。