アラモ(1960)のレビュー・感想・評価
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監督と主役のミスキャスト
惜しいですねぇ〜。
せっかくの題材がもったいない。あまりにも情緒的に描きすぎ。
「アラモ砦の戦い」は誰でも知っているという前提での演出。
でも、実際のところ、何でこの無謀な戦い(少なくとも映画の中ではそう描かれている)が起きたのかをちゃんと知っている人が、アメリカ人でもどのくらいいるだろうか?
有名すぎて、「見る人がみんな知ってる話」という思いこみが先にあるので、時代背景や、因果関係を描こうとは考えていない。
当初、題材に惚れ込んだジョン・ウエインが制作・演出だけするつもりが、映画の注目度、興行成績を考えて自ら主演せざるを得なかった事情はあるにせよ、彼の演技力でクロケットのセリフはきつい。 ジョン・フォードが心配して無理やり協力したという話も頷ける。
トラビス役のローレンス・ハーベイはさすがですね。杓子定規な職業軍人と、ざっくばらんなアメリカ人の対照的な言葉遣い、言い回しは面白かった。この映画の大きな特徴。
リチャード・ウイドマークもいいですね。 やや過剰演出のきらいはありますが、うまいと思います。 彼の場合、粗野なざっくばらんな西部人よりも、ひねくれた顔のごとく、やや陰影ある役柄、
例えば、「ワーロック」で、主人公に共感しながらも抗う演技のいる役が似合う。トラビス役をしていたら面白い映画ができた様にも思います。
戦いの起きる伏線から描かれていれば幅のある見応えのある作品にも仕上げられる題材だけに惜しく感じます。
本作は60年近い時間を経て、今またアメリカだけでなく世界中の自由に生きている国々にメッセージを発し始めている
傑作だ、もっと高く評価されるべき作品だ
ジョン・ウェインが製作、監督、主演をしている
映像、スケール、脚本、配役、演技、音楽どれも素晴らしい
巨匠ディミトリ・ティオムキンの手になる主題歌は超有名で映画音楽の定番中の定番
それどころか、ブラザーフォア版は英語を離れてポップスの大ヒット曲だ
舞台は1936年のテキサス
しかし西部劇とは厳密にはいえない
西部劇でイメージされる保安官とカウボウイのガンファイトの物語とは全く違う
南北戦争よりも25年も前のテキサス独立戦争の際に実際にあった話の物語だ
どちらかと言えば戦争ものをイメージした方が近い
この戦いの30年近い昔欧州大陸で行われたナポレオン戦争のような戦闘シーンが大迫力で展開される
それも当然CGも特撮もなしで、エキストラの大量動員の力業で撮られているのだ
この戦いは日本人が桶狭間の合戦を一般常識としているように、アメリカ人なら誰しも知っている
そしてそれは単なる戦いではなく、アメリカの建国精神に直接関わる形で全滅して命を捧げた英雄達の物語として記憶されているのだ
主要登場人物のテキサス側の3人の指揮官の名前は国民的な英雄として、日本でいうなら幕末の英傑みに有名な人名になる
特にデイビー・クロケットは坂本龍馬並みの人気だろう
だから映画化も本作以前に3作もあるし、本作以降も映画化が何作も行われている程のものだ
それほどアメリカ人の精神の琴線に触れる物語なのだ
もちろんその筆頭がジョン・ウェインであったわけだ
ジョン・ウェインは主人公に自分の信条としてこう語らせる
共和国
実に良い響きだ
人々が自由に暮らし、自由に話し、自由に行き来し、売り買いし、酔ったり醒めたりする
君もこれらの言葉には感動するだろう
共和国
胸が詰まる言葉だ
正にアメリカ建国の精神であり
今日の文明世界の精神を代表するものだ
本作を製作した時代を考えれば、もちろんソ連との冷戦を意識したものだ
ナチスとの戦いの記憶もまだあたらしかったのだろう
では21世紀に本作を観る現代人にそのメッセージは届くのだろうか?
しかも日本人である我々の精神にも届くのだろうか?
その精神はフランシス・フクヤマの著者「歴史の終わり」にあるようにソ連に打ち勝ち、共産主義よりもこの自由主義が優れた思想であると決着がつき、思想史の歴史は終焉を迎えたのだ
だから21世紀に生きる我々日本人もその考えは当然の如く共有されている
しかし歴史には反動がつきものだ
日本の近くには共和国と名乗る国がいくつかあるが果たして、先ほどのような自由のある国なのだろうか?
独裁者や独裁政党が恣意的に認める範囲内に限りの但し書きが実はついており、その線を越えることは命の危険がある国というのが実態なのではないか
つまり本作は60年近い時間を経て、今またアメリカだけでなく世界中の自由に生きている国々にメッセージを発し始めているのだ
もちろん我々現代の日本人にもメッセージを発しているのだ
21世紀のアラモは台湾か沖縄だ
そう考えれば得心がいくのではないだろうか
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