劇場公開日 1974年12月21日

「忘れがたい夜」アメリカン・グラフィティ 自分BOXさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0忘れがたい夜

2025年3月27日
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鑑賞方法:映画館

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今やレンタルビデオ屋もほぼ壊滅状態。サブスク配信も観たいと思ったタイミングでラインナップから消えていたり、元々無かったりで、どうでもいい物を軽く観る分には良いけど、本当に観たかった映画にたどり着くには一昔前よりも不便になってんじゃねぇの?と思える昨今。

レンタル全盛の時に「いつか観ておきたいけど今じゃなくてもいいな」と後回しにして、観れなくなってしまった映画達ごめんなさい。そして、再び観れる機会を与えてくれてありがとう。午前十時の映画祭。

さて、前置きが長くなったがアメリカン・グラフティ。
高校卒業後、故郷からの旅立ちを翌日に控えた若者達のワンナイトの群像劇。いわゆる『古き良きアメリカ』描写。50sのアイコンとして見かけるアイテム、ファッションがふんだんに出てきて「ああ、ここが元ネタだったんだな」知れた。なるほど、確かに格好良く思える物がたくさんあり、懐古主義と言われようと50s趣味を続けたり、若い世代で新たにハマる人が出るのも頷ける。

しかし劇中は60年代初頭に差し掛かっており、風景はバリバリの50sなのに登場人物が既に「あの頃は良かった」と50年代を懐かしんでいるのが面白い。時代はベトナム戦争にアメリカが本格参戦する直前。アメリカ史に影が指し始めた『古き良きアメリカ』最後の瞬間だったのだろう。

まぁ、そんなのは映画を観ている我々観客の神の視点であって、登場人物の殆どがそんな事は考えず、ナンパに励んだり一目惚れをしたり、車で通りを流したり、出会ったり別れたりして各々の『今』を自然に生きているのがいい。

劇中、共感出来そうな登場人物は冴えないメガネの彼くらいだったけど、あいつにしたって結局はいい思いをしていて「コンチクショー!」とは思ったが、あれは彼にとって、人生で一度はやってくる「生きてて良かった」と想える夜だったのかもしれない。

各々の登場人物が災難続きで『今』は「こんな夜、もうまっぴらごめんだ」と考える瞬間もあっただろうが、後に振り返れば忘れがたい思い出の一夜だろう。

そう考えれば、私が鬱屈としながらレンタルビデオ屋に通っていた十代も、手当たり次第に映画を観れる環境としては大変豊かな時代で、恋愛はなくとも「生きてて良かった」と想える夜も無くはなかった。あの頃が私にとっての懐かしい『アメリカン・グラフティ』だったのかもしれない。

……と、長かった前置きがまるでフリだったかのように思える文をでっち上げて、このレビューを締めよう。

自分BOX
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