「眠くなってしまったけれど…」甘い生活 雨音さんの映画レビュー(感想・評価)
眠くなってしまったけれど…
同じような馬鹿騒ぎシーンが長すぎて、正直何度も眠くなってしまった。
しかし、これが、観終わってみると、いくつかのシーンがとても印象に残っており、けっこう考えさせられる。うーん、やはり深い映画だった、と思った。
まず冒頭のシーン。この場面は、この映画を象徴するシーンだと思う。宗教がその役割を果たさない世の中。金儲け主義と不道徳がはびこっている。その中で何も考えられない人びとが何も考えず今日を生きる。
シルヴィアという女優を追ってマルチェロはヴァチカンの塔に登っていくシーン。他の記者たちの脱落をよそに彼はひたすら駆け上がって、彼女と遂にてっぺんに辿り着く。勝利者だ。しかしそこには、あとは飛び降りるしかないと言わんばかりのどん詰まりがあるだけだった。
友人スタイナーの登場。彼の素晴らしく自制された様子は、少々辛そうで壊れるのを抑えている感じが伝わり絶妙だった。彼はマルチェロにとっては、救いの選択肢の候補だった。彼が子供を道連れにしたのは意味があったのだろう。
マルチェロの父親も登場する。父親はふつうに快活で、楽しく生きる術を知っているように見える。でも、あっけなく彼は帰ってしまった。親も、もはや行くべき道を示してはくれない。
そして繰り返されるエマとの口喧嘩。「母性の押しつけ」を嫌がるマルチェロ。エマの自殺未遂の勝手さ。彼女の愛は本当に愛と呼べるのか。
そして何と言っても最後のシーン。夜通しどんちゃん騒ぎをして疲れ果てたマルチェロと対比的に、少女の驚くほど美しくみずみずしい顔が眩しく映し出される。
さすが、深い映画だった。
しかし、それにしてもやはりどんちゃん騒ぎのシーンは退屈だったかな…