アパッチ砦のレビュー・感想・評価
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美しいモニュメント・バレーを背景とした快作
蓮實重彦を尊敬しながらもジョン・フォード作品はTVで「わが谷は緑なりき」を少し観たぐらい。ただその印象は鮮烈で、スピルバーグの「レイダース」と比較してフィックスのキャメラの画角の美しさに感動した記憶はある。
「アパッチ砦」はパートナーが村上春樹の野球についてのエッセイ等から観るのを望み、付き合いで観たのだが、面白い作品だった。
モニュメント・バレーを背景に、性急に走る6頭立ての馬車の壮大な美しさを軸に、時折インサートされるグループショットや、後半現れる不吉な女性達のアップ等、映画的なキャメラの美しさは際立っている。ただなかには不思議なカットつなぎもあり、似た構図で疾走する騎馬隊のジャンプカット?のようなつなぎは意図が読み取れなかった。
物語は南北戦争の失敗からアパッチ砦に左遷されたサーズデイ(ヘンリー・フォンダ)が、娘のフィラデルフィア(シャーリー・テンプル)を連れて赴任するところから始まる。やがてフィラデルフィアは現地にいたオローク軍曹の息子で、同時期に士官学校を卒業したミッキー(ジョン・エイガー)と恋に落ちる。しかし頭の固い保守的なサーズデイは2人の関係を許さないばかりか、アパッチ族との和平を願うヨーク大尉(ジョン・ウェイン)等の話に耳を貸さず、無謀で恥知らずな作戦を決行、アパッチ族からの返り討ちに遭い壊滅的な打撃を受ける⋯という物語。
サーズデイの人物像は現代から見るとかなりステレオタイプの頑固おやじだが分かりやすく、後半の悲劇に向けて不吉な予兆を示す。ヨーク大尉というかジョン・ウェインの描かれ方は、笑ってしまうくらいのヒーロー像で、どこでも決めポーズを決めるのだが、極めつけはエンディングでの窓辺のショットで、窓に映る騎馬隊の向こうから外を臨むカッコよさは、後々のヒーロー映画の典型となったことを推察する。またシャーリー・テンプルのかわいさはまさにアイドルの元祖と言えて、素晴らしかった。
それにしても、中盤まで姿を現さないアパッチ族の演出や、クライマックスの戦いの見事な描写には、スピルバーグや黒澤明への直接的な影響や、イーストウッドの西部劇への関与を感じ、非常に感動しました。
どちらかと言えば、ヌーヴェルヴァーグ以前の古い映画を観るのが苦手な方なので、もう少しこうした源流を観てみたいと思いました。
インディアンに敬意を示すジョン・ウエインとインディアン殲滅されるヘンリー・フォンダ隊
ジョン・フォード監督による1948年製作のアメリカ映画。
原題:Fort Apache、配給:セントラル。
インディアンと白人が戦う西部劇は初めて見た気がする。敵ながらインディアンに敬意を持つジョン・ウエインの進言を聞かず、がむしゃらに攻撃しようとするヘンリー・フォンダ率いる攻撃隊が待ち伏せしていたインディアンに一方的にやられてしまう展開は、意外感も有り、興味深かった。
王道パターンを崩した展開なのか、それとも人種差別の声を避けたのか?
ジョン・フォード監督はアイルランド系の移民二世であることを知った。ヘンリー・フォンダ演ずる指揮官はアングロサクソン系で、ジョン・エイガー(ウェストポイント陸軍士官学校卒業した中尉)とウォード・ボンド親子はアイルランド系らしく、差別的な視線を向ける。ジョン・ウエインもアイルランド系らしく、この映画は人種差別者と、そうでない者とを対比した映画でもある様だ。
大スターとして有名なヘンリー・フォンダが、言わば否定される人格像で出演していたのには、多少驚かされた。それだけ、ジョン・フォードが大監督だったということか、それともどんな役でも演じられることをプラスと考えるタイプのスター俳優だったのか。
ヘンリー・フォンダの娘役演じたシャーリー・テンプルの愛らしさや颯爽と馬を乗りこなす姿には驚かされた。初めて、彼女の出演映画を見たが、当時のアイドル的スターらしいが、後に政治家となり大使までなったのも驚き。
闘いのシーン、特に白人騎兵を乗せて、またインディアンによる撃ち殺されて乗り手無しで疾走する馬の映像はなかなか見せるものがあった。
脚色フランク・S・ニュージェント、原作ジェームズ・ワーナー・ベラ、製作ジョン・フォード、メリアン・C・クーパー、撮影アーチー・スタウト、美術ジェームズ・バセヴィ、音楽リチャード・ヘイグマン、編集ジャック・マレイ、衣装デザインマイケル・メイヤース ロバート・カリカート。
ジョン・ウェイン、ヘンリー・フォンダ、シャーリー・テンプル、ジョン・エイガー、
ペドロ・アルメンダリス、ウォード・ボンド、アイリーン・リッチ、ジョージ・オブライエン、アンナ・リー、ビクター・マクラグレン、ディック・フォラン。
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