アナライズ・ミーのレビュー・感想・評価
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色々な表情を魅せるデ・ニーロ
パニック障害に悩むニューヨークマフィアのボス、ポールをロバート・デ・ニーロが、ポールに振り回される精神分析医ベンをビリー・クリスタルが、ポールの腹心ジェリーをセントバーナードのようなジョー・ヴィテレリが演じる。
粋にスーツを着こなすデ・ニーロ。
ヤク嫌いだからと投薬を拒否するデ・ニーロ。
TV映像に嗚咽するデ・ニーロ。
あれこれと持論を展開するデ・ニーロ。
そしてベットシーンも。
色々な表情をデ・ニーロが魅せる。
ラストにほっこり。
-弱いオスは消される
-マリア様お助け下さい
BS松竹東急を録画にて鑑賞 (字幕)
さすがデニーロ
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デニーロはマフィアのボスだったが、パニック障害にかかっていた。
そして偶然自動車で接触した精神科医を、強引に主治医にする。
ところが素直でないデニーロはパニック障害であることを認めない。
なのに夜中に急に部下に命じて強引に医師を連れて来させたり。
ついには医師の結婚式にまで乗り込んで来る。
医師は頭に来ているが、どこかデニーロを憎めなくなって来る。
そんな中で医師が裏切ったと思ったデニーロは医師を殺そうとする。
というかいつもの冷徹さは出ず、なかなか踏ん切りがつかない。
苦し紛れの会話から、デニーロの病気は彼の小児体験が原因と判明。
目の前で父が殺されるのを救えなかったことに起因していた。
この事に気付き、デニーロは一気に晴れ晴れとした心になる。
最後はマフィアのボスから足を洗うことを部下達の前で宣言。
元々デニーロを殺そうとしていた奴らとの銃撃戦になる。
そこに警察が踏み込み、全員逮捕となるが、医師との信頼関係は深く、
獄中でも医師と患者の関係であり続けるという結末。
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この映画を見ていて改めて気付いたことが2つある。
この時代(1990年代?)の映画は何故か好きで面白いということ、
それからデニーロの演技はやはり素晴らしいということ。
デニーロの映画は、いつも彼の演技のうまさに引き込まれてしまう。
そして善人であろうと悪人であろうと、共感してしまう。
この映画も、一般の良識人である医師に共感しながらも、
破天荒なデニーロにも何故か共感してしまう。
平気で人を殺しても何となく許せてしまい、足を洗えば良かったと思う。
そして医師との友情を心から祝福する。
いつになくクサいが、本当にそんな感じにさせてしまう。
それがデニーロの持つ魔力なんだと思う。
全体にコメディを織り交ぜながら軽快な感じで展開し、
非常におもしろい作品になっていた。
面白いが、映画としては散漫な印象だった。
面白いが、映画としては散漫な印象だった。とはいえ何か所か爆笑した・・・w
マフィアのドンであるポール(ロバート・デ・ニーロ)はパニック発作にかかり、精神分析医ベン(ビリー・クリスタル)との付き合いの中で自分の中のわだかまりを氷解させていく、というコメディ映画。
デ・ニーロはさすがのカッコよさ。観てて惚れ惚れする。一方でビリーさんの演技はわかりやすい「だけ」だった。表面的で深みのない感じ。TVの人なのだろう。デ・ニーロのマフィア映画のパロディが入るが、わかりやすさ優先で雑でありその辺はそんなに楽しくなかった。
物語の大きな流れはポールとベンの人間関係とポールの成長だと思う。
友情と成長の物語
ベンとポール、二人の友情を精神分析医とその患者という関係から描き始める。実際の分析でも患者が自己の新たな一面に気づくことは多いだろうし、だからこそ分析医と患者の間に深い人間関係が生まれることがあっても納得できる。それを脚本に利用したものだ。
特にポールの父の死について大きく踏み込むシーンを経て二人の関係は完全なものになる。・・・はずなのだがその後でこの二人の関係性は有効活用されていない。このシーンが作用を及ぼすのはポールの成長だけに感じた。
もったいないことに成長するのはポールだけでありベンには見られない。ポールは自分の心の中のわだかまりがパニック障害として顕在化しそれをベンの助けを借りて解決しようとする。ベンとの付き合いの中で父親の死にざまが真の原因があることが分かりそれを氷解させた。そして最後にはマフィアからの引退を決意し新しい生活を宣言する。これまでのマフィア生活を続けるのではなく引退することで自分の人生を受け入れた真に自然な生活に向かうことがラストで暗示されていたのだと思う。フロイト以降の精神分析の影響を受けたストーリーだ。
ベンは成長とかしない。。。
一方のベンはと言えば最初から最後まであまり変わらないように思える。彼はずっと振り回されっぱなしだった。せっかく序盤で同じく分析医である父との確執が描かれたのにその後ほぼ触れられることはない。
最後のマフィアの会合でベンは大男のジェリーをぶちまくるし大物たちの前でテキトーを吹きまくるが、別にあれは成長とかではない笑。コメディでたまにある貧弱マンの覚醒シーンだ。
ところどころある雑な展開
展開に納得できなかった点を列挙する。こういうのが多いと雑な映画だと感じる。
・ベンがFBIの指示でポールを盗聴する際、途中で盗聴器を取り外すがあれは謎だった。なんで取り外したんだろう。ポールたちからボディチェックされる可能性が高いと判断したのだろうか。あまりそう思えるシーンはなかったが。。。
・ベンの新妻の不安はずっと続く。この二人どこで出会ったんだろう。冴えない精神科医とTVキャスターか。よく考えれば似合わない組合せだった。
・カルロの裏切り者設定は何だったんだろう(最後のボスたちの会合でポールが引退を表明し、ファミリーはカルロに継ぐと宣言する。だが同時にカルロが裏切り者出ることも明かした。カルロは帰り際にポールのライバルであるプリモと組んで襲撃してくる)。「なんでコイツ裏切り者なの?」と唐突な印象だった。いろいろ見落としたのかな?最後のシーンを描くために銃撃が必要だったならプリモだけで良くない?
中盤:目まぐるしく変わる関係性
中盤で二人の立場・関係性が目まぐるしく変わる。
まず序盤でポールがベンに治療してくれとまとわりつく。対してベンは結婚直前であり厄介払いのためポールからの依頼を拒絶する。
一方で他の有力マフィアがポールにベンを消すようけしかけるが、ポールはベンを殺す奴は許さないと宣言する(ポールの認識:ベンは主治医→主治医+守るべき存在)。しかしFBIがベンとポールの関係に目を付けベンに協力を無理強いする。(ベンの態度:ポールを拒絶→エセ接近)。そしてポールがベンがFBIに取り込まれたことに気が付く(ポールの認識:ベンは守るべき存在→裏切り者)。最後にベンを始末しようとしたところでベンが真の分析医に戻る(二人の関係性:医者と患者)。
この関係性の展開が目まぐるしく中盤の見せ場だ。テンポがやや速すぎくらいで展開していきとてもスリリングで、追うだけで楽しかった。
映像美:ガラスがしっかりと飛び散る
この映画の特徴としてガラスの破片をきちんとばらまく点があると思う。まず冒頭の襲撃シーンでレストランのガラスが割れまくる。迫力満点だ。だが非常に危ないシーンでもある。破片の雨の中にロバート・デ・ニーロがいるんだから美術さんはさぞ大変だっただろう。観ればわかるが本当に危ない。ガラス片が散乱していて物陰まで這い出るだけで膝にガラスが刺さりそうだ。一方であれだけのガラス製品が砕け散るのは映像的に美しい。映像をスローにして華やかなBGMをかけるのも、飛び散る破片の美しさを引き立てたものだと思う。まぁ一瞬なんですけどね。
こんな感じでガラスが飛び散るシーンは観る方は楽しいが撮るほうはヒヤヒヤだと思う。そんなシーンが他にもある。ホテルでポールに殺し屋が迫るところ(絵画のガラスが割れる)や、ポールが父の死に向き合った直後の銃撃戦(車の窓。なんかあり得ない方向から破片が流れ込んでくる。投げ込んでるなw)で割れる。これらは見応えのあるところだ。
ひょっとすると私が映画を観てないだけでガラスがこの程度飛び散るのは普通なのかもしれないが・・・。私としてはガラスよく飛ぶわーと感心した。
しかしこの飛び散るガラスがストーリーの何かと密接に絡まっていたり暗示していたりするわけではないところがこれまた雑である。分かりやすい映画にはそんな分かりにくい演出が入り込む余地はないのかね。。
笑えるコメディシーン
がっつりコメディなシーンも用意されている。コメディ映画だから当然だが。たとえばリムジンを使った豪華ネタ。FBIがマフィアの集会を押さえようと空からヘリでリムジンを追いかける。追跡していたリムジンがトンネルを抜けると、おんなじリムジンが6台くらい出てきてあちこちに散らばる。
これを見たヘリパイロットが「どの車だぁー?!」と叫び、無線から無線から「黒のやつだ!」という使えない応答が返ってくる。全部黒だっつーのw。定番なおバカ映像だが、ちゃんとハイウェイ?でリムジンを6台走らせており迫力抜群で笑える。
あと、ハンサム・ジャックと呼ばれて出てきた手下が普通にブサイク、とか。こういうネタを瞬間的に挟まれるとやっぱ笑える。
ベンの分析医稼業について
ベンの日常的な治療風景は冴えない。全く冴えない。なんと患者のくだらない悩みを聞いている内に辟易して上の空になってしまうのだ。ちゃんとやれよw。
だが単なるヤブ医者かと思いきや、盗聴作戦中のドキドキな状況下でもポールについて新たな真実が得られれば患者の心の問題について一気に関心が向くちゃんとした医者なのだ。
演出としてはポールの父親問題を氷解させ銃撃戦をしのいだ直後、日常の退屈な診察シーンが来る。極限の刺激からどうでもいい患者の悩みが来ることで、振り回され役のベンにとっても実はポールの診察は実力を出すいい機会なのだということが示される。まぁちょっと好意的に拾いすぎかも。。。
とはいえベンが実はきちんとした分析医であるところがこの映画の魅力の一つだ。FBIの捏造証拠にあっさりとダマされ利用されるところでベンの魅了は一度下がる。何しろポール(デ・ニーロ)の敵に回るのだ。観客はたいてい大物役者に肩入れするものだと思うし、これは作品への感情移入にも大いにも影響すると思う。だから情けない罠でデ・ニーロの敵に回ってしまうと観る方からしたら魅力が落ちてしまうのである。
ところがどっこい、緊迫の盗聴作戦の中でもポールの父の死が心臓発作ではなく
ポールの目の前での銃殺だったと知るやいなや、それまでの落ち着きのなさはどこへやらで一気に診断モードに入る。ここでベンを見直す。頼りになる精神分析医じゃないか!となるのだ。この後のベンの働きは観ていて痛快かつ爽快だ。
ポールに殺されそうになったとしても、患者についての手がかりをつかんだ分析医は強い。堂々とポールの深部をえぐりだす。この映画の見せ場の一つだ。
思えばここまでの展開もナチュラルで鮮やかだ。FBIに利用されたベンがポールにすぐに会いたいと言い出す。これは自然だ。会ったのはポールなじみのイタリアン店。ここも自然。そこに他のマフィアがいてポールが挨拶に離席したところ、腹心が実はこのレストランでポールの父が殺されたのだと口にする。いい流れだ。
ポールの腹心、ジェリー
ポールの腹心ジェリーは相当なアホキャラだが、これは笑いをさそう以外にも活きていると思う。
コメディかつ情緒不安定な役なのでポールはよく泣いてしまう。マフィアのボスが子どものように泣くので威厳はさっぱりない。だがそんなときにジェリーのアホキャラが活躍する。アホだからボスが泣きまくってるのが聞こえると一緒に悲しんでしまうのだ。
むろん他の部下は「こっちが恥ずかしくなる!」とまともな反応を見せ、観客を置いてきぼりにさせない役を担う。やはり「普通」のリアクションをしてくれる人物がいてくれないと観客は共感できない。
しかしジェリーはそんなまともな役を同僚に任せ、病んでるボスと一緒に悲しむのである。この点が直後に襲撃されても平気でボスを守っている姿の説得力に通じる。ボスのことを「恥ずかしい」とかいってけなしてしまうと、どうしても命がけでボスを守り切る姿に説得力が出ないだろう。「大きくて力持ち」な三枚目キャラの有効活用なのだ。
それにしてもジェリーのブルドック顔は最高だ。ベンと式場から逃げ出すシーンなんて表情だけで笑える。とんでもなく武器になる面だ。
まぁそれにしてもデ・ニーロはかっこいい。ラストの会合にて騒然としたところで颯爽と現れ場を掌握して引退を告げるシーンは男でも惚れる。劇中でさんざん子どものように泣いているのに、あれだけかっこよく決められるともうダメだ。映画俳優はやっぱすごい。
余談だが、字幕よりも吹替えのほうがセリフを正しく汲み取れていることが多いと思う。字幕は観客が一瞬で読み取れる量に納めなければならないからかなり多くの情報を削いでいるのだろう。
気に入ったセリフ:「お前なんてアメーバ一匹治せないヤブ医者野郎だ!」
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