「もっと徹底的にやれよ!」アタック・オブ・ザ・キラートマト 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
もっと徹底的にやれよ!
クソ映画にも流儀というものがある。クソであることに自覚がないまま徹底的に本気でやるか、確かな自覚を持ったうえで徹底的にバカをやるか。前者はやろうと思ってもできるものではなく、それこそエド・ウッドのようなごく一部の天才クソ映画監督のみが成しうる所業だ。
一方で後者もまた至難の業。クソ映画を作ろうと意気込んだところで、途中で怖気付いて少しでもブレーキを踏んでしまうと途端にただの駄作へと落ちぶれてしまう。S・キングの『地獄のデビル・トラック』や石井輝男の『恐怖奇形人間』なんかは最初から最後まで少したりとも速度を緩めなかったがゆえにクソ映画として大勝利を収めていたように思う。
で、本作だが、クソ映画としてはすこぶる出来が悪い部類に入ると思う。自身がクソであることに強く自覚があるくせに、そこに徹底性が込められていない。クソ映画を貫徹することに対して中途半端に恥じらいがあるのか、言い訳がましい冷笑が作品のほとんど全体を覆い尽くしている。みなさんこれはクソですよ〜真に受けないでくださいね〜とでも言わんばかりの生温い目配せシーンが延々と続く。
これは他の立派なクソ映画に対して失礼きわまりない。クソ映画など小手先の技巧だけでじゅうぶん再現可能だろうという監督の傲慢さと浅薄さが滲み出ている。そんな熱量も勢いも欠いたおためごかしの擬似クソ映画に愛すべき点など一つもない。
本当にクソ映画がやりたいのならくだらない自尊心は捨ててひたすらクソ映画作りだけに集中してほしい。そういう徹底性があってこそ歴史に名を残す偉大なクソ映画が生まれる。
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