劇場公開日 1983年5月21日

「ドイツ人には勝てない日本人。」アギーレ 神の怒り KIDOLOHKENさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 ドイツ人には勝てない日本人。

2025年12月8日
PCから投稿

日本人は、いまだに「自分たちこそ世界一のものづくり大国だ」と信じているが、それは幻想である。
革新を嫌い、出る杭を叩き、誰かが何か新しいことを始めようとすると、
周囲がよってたかって潰しにくる――それが日本の現実だ。

だが、この映画『アギーレ/神の怒り』を見てほしい。

ここには、
「自分が信じた可能性に向かって突き進むとはどういうことか」
が、狂気と共に、そして圧倒的な力強さで描かれている。

アギーレを“狂った男”と片付けるのは簡単だ。
しかし私は違うと思う。

彼は目的を達成するために、
自分を変身させた男だ。

人間が自らの限界を突破しようとするとき、
理性は邪魔になる。
仲間も理解してくれない。
社会は必ず阻む。

それでも人は、
「行く」と決めたら行くしかない。

アギーレの旅は失敗に終わった。
隊は壊滅し、夢は砕け、孤独と狂気だけが残る。

それでも――
この映画が描いているのは“人間の可能性”そのものだ。

たとえ一万人が失敗しようとも、
そのうちの一人はエル・ドラードに辿り着く。
偉業とはそういう確率の積み重ねでしか生まれない。

アギーレは敗者ではない。
挑戦し続けた者だ。

そして日本が本当に世界に勝とうと思うなら、
この“アギーレ的な狂気”を少しは取り戻すべきだ――
そんなことまで思わせる、恐ろしいほど刺激的な映画である。

KIDOLOHKEN