「エッチです」青いパパイヤの香り pekeさんの映画レビュー(感想・評価)
エッチです
卓越した隠喩法と秀逸な細部の描写によって彩られた完成度の高い作品です。
「描かずにして描く」――そのようにして描かれた性は、また、生をも表現しているのかもしれません。
主人公ムイの肌にうっすらと浮かぶ汗が印象的です。それはベトナム・サイゴンの湿度や空気を感じさせる(僕はサイゴンを2度訪れました)と同時に、20代のシーンでは健康的かつ艶かしい女性のエロチシズムを感じさせます。抑制の効いた演出が、かえって想像力を刺激します。
物語の前半は、南の国の、ある一家の生活をのぞき見るような感覚で作品を鑑賞しました。
後半はセリフが極端に少ない。
考えるのではなく、観客が感じることに重点を置くようにつくられているのでしょう。
静かに語りかけてくる名作。
起伏に富んだストーリーでないにもかかわらず、退屈させずに見せる、監督の並々ならぬ技量に感服しました。
ただ一点、肝心のパパイヤ(庭になっていたもの)が何故かそれほど瑞々しく見えなかったのが少し気になったけど、撮影地がパリということだから、思ったようなものが用意できなかったのでしょうか。
それにしても少女時代のムイは、とても可愛いですね。
追記
もしやと思って鑑賞後に調べたら、やっぱり、本作のトラン・アン・ユン監督、『ノルウェイの森』を撮った人だったんだ。
こんなに素晴らしい作品をつくる監督だから、春樹さんも映画化を許可したのだろうな。
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