「瞳を見開いても見えぬもの」アイズ ワイド シャット kakerikoさんの映画レビュー(感想・評価)
瞳を見開いても見えぬもの
「バリー・リンドン」に引き続き、キューブリックの遺作作品を鑑賞しました。魅せる映像へのこだわりは例外なく感じられると思います。ただ、私が初見に観てありのままに感じたことを述べられるなら、一言、普遍的な男女の心の在り方をちょっとアブノーマルなシチュエーションの中でセンセーショナルに描いているだけということです。
男と女のすれちがいの山場は二つありました。一つ目は招待された知人宅のパーティ翌日、マリファナを吸いながら肌を合わせようとした際のビルとアリスの問答。そこで、夫は自分に絶対的愛を置いてくれていたと信じていた妻が、妄想とはいえ、他の男性の存在を身体の中に許しているという愕然の事実を知ってしまいます。
更にもう一か所は、ラスト、子供のクリスマスプレゼント選びに3人で売り場を周っている時。この場面は作品の結びともなる重要なシーンだと思いますが、やはり二人の会話はぎくしゃくしています。危険な過ちを実際に犯した男を妻はやんわりと、上から目線で許そうとしますね。でも、男は反撃します。「夢の中だってすべて意味があるから見るのだと。」さらに男が「永遠に…」という言葉を使えば、女は「永遠なんてナンセンス~」というようなセリフをさらっといいのけます。面白いです。愛し合って結婚した夫婦とて、こうも考え方はかみ合わないのものなのか…、男と女。平行線の心を上手に美しく描いてくれていると思えた作品でした(苦笑)
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