バッシングのレビュー・感想・評価
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【今作は、戦争国にボランティアに行き、或る出来事に逢った女性への数々のバッシングと、彼女が再び生きにくい日本を出国する姿を描いた極北の社会派映画である。】
■有子(占部房子)は戦時国でボランティア活動をしている最中、或る出来事に会う。帰国したものの、自己責任を問われ、世間から激しいバッシングを受ける。家族も同様に集中砲火を浴び、父は会社を首になり飛び降り自殺をする。
◆感想・・故、小林政広監督作品と私
・私が、故、小林政広監督作品を初めて映画館で観たのは2013年公開の「日本の悲劇」である。丁度、子供が幼稚園に入った頃で、長期登山を辞めた事で映画を観始めた頃である。
劇場名も覚えているし(記録用でこのサイトを使っていた頃なので、レビューらしきものも残っていた。)、観たのは日曜日の朝8時台。お客さんは私ひとりであった。
内容は衝撃的で、それまで観て来たエンターテインメントの欠片も無い映画で、とにかくビックリした。
その後、監督の遺作となった「海辺のリア王」も劇場で観た。そして、仲代達也さんとタッグを組んだ第一作「春との旅」は、配信で観たモノである。
・当然パンフも購入したのだが、今読み返すと、現代でも今作にも通用する監督のメッセージが残されていたので一部を記す。
- 皆々様
・・・この劇中で起こる出来事は、実際に過去に、そして今も起こっている出来事なのです。一切のエンターテインメント性や、センチメンタリズムを排し、或る限られた空間の中で、生きものの生態を追うがごとく、この悲劇を描いて行きたいと思います。-
・今作でも、有子は会社を首になり、父も30年務めた会社を首になり、ビールを飲んだ後に自殺する。だが、この作品ではそのシーンは直接的には描かれずに、ビール瓶が林立する食卓とベランダに面したサッシが開いていて、カメラはベランダに出て外の風景を映して、その後イキナリ、僧侶が読経する後ろで喪服の有子と母(大塚寧々)が座っているシーンに切り替わるのである。
凄い、カメラワークと演出だと思うのである。
・彼女が良く行き、おでんを買っていたコンビニの店長から言われた”アンタ、親父さんを殺して何の反省も無いのかよ。二度と来るな!”という言葉も凄いのである。電柱に張ってあった”親のしつけが・・。”と言う言葉の見せ方も。
■ラスト、彼女が母に言う、日本に居た時の幼い頃からの疎外感を語る涙を浮かべながらの有子の長セリフ回しも、凄いのである。
”あの国に行くと、皆が私の事を慕ってくれるんだよ!。私を必要としてくれるんだよ!”
<今作は、戦争国にボランティアに行き、或る出来事に逢った女性への数々のバッシングと、彼女が再び生きにくい日本を出国する姿を描いた極北の社会派映画なのである。
このサイトでは、小林政広監督作品に対するレビューは極少数だが、少しづつ観て行く事を私は決めたのである。>
日本人の悪い癖
見たかった映画をようやく見ることができた。日本映画専門チャンネルに感謝!
帰国してから半年も経つというのに、いまだに嫌がらせの電話が一日に10本。そして、父親の孝司の会社にも嫌がらせメールが後を絶たない状況だったため、彼も30年勤めた会社を辞めざるを得なくなってしまった。そして彼は自殺・・・
人質事件に対するバッシングは凄いものだったと思う。ただ、この作品は急きょそれを題材にしたため、明らかに欠点がある。製作する意図はひしひしと伝わってくるものの、主人公である有子(占部)の個性が強すぎて、いかにもエキセントリックな性格のためにバッシングを受けているんだと思ってしまうところだ。コンビニでは毎回おでんを頼み、具材を別々の容器に入れ、つゆだくにさせたり、付き合っていた彼氏に対してもぶっきらぼうな言葉を投げかける。自転車には鍵を全くかけないのは北海道の田舎町であることを表現しているのかもしれないが、もし盗まれたら、それも”自己責任だ”と責められてしまいそうな・・・極め付けは父親の葬儀の後、継母(大塚寧々)に対して「保険金をもらう権利がある」などと突拍子もない発言をしたりする。これじゃ性格のためにバッシングを受けているという印象しか持たない作りになってしまってる・・・。
ところが終盤のセリフでは、有子が周りの人から認められなかったこと、中東に行って初めて人の役に立てたことなど、どうしてボランティア活動に没頭したかを語ることで、なぜだか自分にも人を見る目を変えなきゃいけないなぁ反省してしまう。もしかしたら、観客もついついバッシングに加わってしまうかのような映画の罠だったのかもしれない(笑)。
当時のマスコミや政府による異常なまでのバッシングを思い出す。辛坊治郎なんてのはかなり激しい自己責任論を説いていたのに、後にボートで太平洋横断し遭難事件を起こした時には平気で自衛隊の救助を受けていたという笑い話があった(笑)
事件を知らなければ・・・
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