「絵空事」東京タワー かみぃさんの映画レビュー(感想・評価)
絵空事
拙ブログより抜粋で。
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人気女流作家・江國香織原作の同名小説の映画化。
最初に書いとく。これほどまでに作品世界に入れなかった映画は久々。
予告編を見たときから、自分とはかけ離れた世界の話ということである程度は予想してた。にしても、だ。
東京タワーを軸にした美しい映像は素晴らしいと思う。俳優陣の魅力も充分にスクリーンから溢れている。
しかし、一昔前のトレンディードラマのような設定や、いちいちが決め台詞のような小恥ずかしい台詞回しがあざと過ぎ、大人の恋愛ファンタジー、ある種の夢物語を通り越して、絵空事にしか見えない。
観る人によるのだろうが、筆者自身は自分の生活やモラル感と折り合う部分が皆無で、とくに前半、あまりに退屈で、座席に座っているのが苦痛でしかなかった。
中盤以降、不倫関係が泥沼化し始めてからは、少しは共感できる部分をなんとか見つけることができたのがせめてもの救い。
不倫中の四人の中では比較的庶民的な喜美子が“バージョンアップ”していく様は可笑しかったし、耕二にまとわりついてくる訳ありの同級生・吉田(平山あや)や同世代の彼女・由利(加藤ローサ)も、若いなりに演技こそ拙いが、この無味乾燥な作品の中ではそのピュアさが逆に潤いを与えてくれる。
一応常識的なモラルを持ちあわせている詩史の夫(岸谷五朗)や透の母(余貴美子)が絡んでくるようになって、ようやく観るに耐える状況が整った。
とりわけ透の母・陽子を演じる余貴美子の気迫の演技が白眉。前半のひょうひょうとした芝居から一転して、詩史に恨み節をぶちまけるシーン、マジ怖かったです。
他に見所がないせいでもあるが、筆者的にはこのシーンだけで元をとった気分。