仮面ライダー THE FIRSTのレビュー・感想・評価
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時代を超越するアクション、当時ですら陳腐だった物語、名作になり損ねた無念の作品
初代仮面ライダーのリブート作品。
出渕デザインのライダーや怪人のデザインは非常にカッコよくて惚れ惚れする。アクションもスピード感重視の格闘術スタイルで、殺陣の組み立てからカットの切り方までとてもスタイリッシュ。
特にこだわりが見えるのはライダーキックの撃ち方。壁を蹴る、地面を蹴る、バイクで加速をつけるなど、「これは強そう!」という納得感を出す演出の数々がとても良い。お気に入りは怪人クモ男を倒したライダーキック。バイクでその辺を一周して勢いを付けるのは天才の発想。
全体的な作風はあくまでリアリティ重視という事でヒーロー然とした演出は控えめ。変身もポーズを決めるのではなくライダーの仮面を被る程度だが、クラッシャーをガチリと取り付ける描写はこれはこれで風情があって良い。
そんな感じで抑制の効いた描写が多いので、映画終盤でショッカー基地へ突入したライダー1号・2号が揃って変身ポーズ風の見得を切る場面が非常に際立つ。一切の有無を許さぬカッコ良さ。このシーンは特撮の歴史に残るべき偉業。
対するショッカーは相変わらず世界征服を企む悪の組織で、イー!と叫ぶ戦闘員も健在。全体的にリアリティ度外視の存在感があり何とも言えない安心感。
おめでとう!と拍手をしながらニコニコとバラの花束を抱えてスカウトに現れるコウモリ怪人は非常に不気味だし、怪人役があまりにもハマりすぎている板尾創路のクモ怪人も素晴らしい。
とにかくデザインとアクションは掛け値なしに素晴らしかった。
翻って、メインストーリーはどうかというと、ぶっちゃけこれはイマイチ。
この作品がいまいちポテンシャルを発揮し切れなかった原因はほぼこの物語部分に集約される。
物語的には仮面ライダーが洗脳から解き放たれてショッカーと戦うというシンプルなオリジンストーリーで、本郷と一文字がヒロイン(あすか)を取り合ったり、病気のウエンツ瑛士が隣の病室の女性(ミヨコ)と恋に落ちたりする。まさかのロマンス全面展開で、仮面ライダーがあまりショッカーの悪巧みを叩いてくれない。
物語の主軸が本郷・一文字・ヒロインあすかの三角関係である都合上、ヒロインの存在は重要なキーとなる筈なのだが、彼女は特に物語を推進したりしないので、ロマンスパートは徐々に冗長になってくる。ウエンツパートは途中でショッカーが絡んできてウエンツとミヨコ共々改造されてしまい、「ショッカー怪人となり果てた者の悲劇」という重要なテーマを象徴するものの、ライダー側のストーリーとあまりにも無関係に話が展開するので浮いている感は否めない。唯一、ショッカーだけが物語の推進力になってはいるが、作中では大した悪巧みをしてくれないのでイマイチ物語が跳ねない。
総じて、オリジンストーリーとしては仮面ライダー自身の描写が十分でなく、正義/悪と分かたれたショッカー怪人同士の対決という構造にしてはウエンツとライダーとの関連性が希薄すぎる。
特にウエンツパートはライダーとの対決を経て、仮面が外れてミヨコと約束した花を見つけるウエンツと、その花を見る事もなく逝ったミヨコという悲劇の結末が非常に印象に残るだけに、もっと本筋に絡んでいれば終盤のエモーションが更に高まっただろうと思う。
「仮面ライダーをカッコよく描く」事に関しては何一つとして狙いを外していないが、物語がそれを支えきることが出来ず、非常にバランスの悪い印象。もっと筋の通った物語があれば傑作として語り継がれたであろうことは間違いない。とてつもないポテンシャルがあったものの、その潜在能力を発揮できなかった不遇な作品である。
・主題歌を歌う仮面ライダー大好きISSA
・大好きすぎてショッカー大幹部として本編にも登場するISSA
・ライブラリー出演で時代を超越する死神博士
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