「 北海道の自然に酔いしれ、大地に根付いた不思議な木と魚捕り。三組の...」雨鱒の川 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
北海道の自然に酔いしれ、大地に根付いた不思議な木と魚捕り。三組の...
北海道の自然に酔いしれ、大地に根付いた不思議な木と魚捕り。三組の純粋な初恋と雨鱒の恋が、川・空・大地の自然と絡み合う・・・
耳が聞こえないが、不思議と新平とだけは心が通じる小百合。幼い小百合は言葉に出さないが「大きくなったらお嫁さんになる」と言う。これに音声があったら、恥ずかしくて見てられない映画になったのではないでしょうか。原作との違いはわかりませんが、映画という手段においてはこの“歯の浮くような台詞が無い”見事な設定となりました。その幼い恋を応援するかのように北海道の夏から冬にかけての大自然が補ってくれるのです。小百合のことが好きな年上の少年、英蔵だけはライバル意識を燃やしっぱなしですが、周りの大人たちも皆応援してしまうかのような少年たちの恋。しかし、新平が絵の才能を発揮してからは、様子が変わってくる。
この少年時代のパステル調の風景が、まるでジブリのアニメに出てくるような世界に感じたのです。また少年目線の多いアングルが、自然を大事するイタリア映画の雰囲気さえも醸し出していました。ストーリーは何故か『フランダースの犬』を思い出してしまいましたが、悪い大人がほとんど登場しないことで安心感を与えてくれるのです。
表だってはほとんど描かれてませんが、新平の母と小百合の父の初恋。釣りばかりしているじいさんと小百合の祖母の初恋。ほとんど観客に想像させる手法をとり、その間にファンタジーのようなアメマスのエピソードを取り入れるという憎い演出でしたね。そして前半のクライマックスでは中谷美紀に泣かされてしまい、後半では綾瀬はるかの意味不明の言葉に・・・圧倒的なパワーを持っていました。感動させるぞー!という、意外性やわざとらしさを感じない地味なストーリーなので、心が洗われるイメージの方が強かった。その点は、同じANAの全面協力ということで『深呼吸の必要』と通ずるものがあります