ミラーを拭く男のレビュー・感想・評価
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サンダンス向き映画
事故現場のミラーを拭いていたときに気付いた寄贈者の名前。役所が立てたんじゃなくて、孫を亡くした大滝秀治じいさんが立てたものだった。そのミラーのおかげで緒方拳の事故でもかすり傷で済んだ被害者。事故を永遠に無くしたいと願うようになった主人公皆川であった。
市内のミラーには飽き足らず、ついに北海道へ向かう皆川。農耕車に上げてもらったり、自転車ツーリングのグループと挨拶したり、爽やかな雰囲気で最北端の町を巡り、やがてテレビ局が取り上げることになった。そういえば『さくら』でも桜の植樹で一生を終える男が描かれていたけど、こうした信念っていいなぁ。
津川雅彦が登場して、手伝いたいと申し出るが、単なるボランティアでやってるわけではないので、そうそう簡単にイエスとは言えない皆川。自分が事故で入院して、過去の事故は片付いたと聞かされホッとしたのであろうか、今度は快く申し出を受け入れた。しかし、皆川はマスコミの取材を中心とした予定の組み方に不満の顔を覗かせていた。やがて、ボランティアが集まり活動が全国展開してしまうが、皆川はグループを離れ、以前のように1人でコツコツとミラー拭きを続ける。
一向にミラー拭きを止めそうにない皆川に対し、自ら教習所に通って夫の手助けをしようと頑張る妻の姿。カーブミラーに頼りすぎだと教官に怒られる栗原小巻が可愛い。
オールリバー・ストーリー
和製ストレート・ストーリー。主人公が皆川さんなのでオールリバー・ストーリーかな。出足不調だが、なんとなく引き込まれていき最後まで見てしまった。着眼点がいい。
カーブミラー拭きの全国行脚なんて、とってつけた動機だったらヤだなぁと思ったが、まあ納得。事故そのものではなく、事故をきっかけにカーブミラーの神聖さ?に気がつき、率直にとった皆川さんの行動が触媒となって人のいろんな行動を誘発する。ストーリーはそれだけ。ほとんどぶれてない。
北海道の雄大な大地をバックにただミラーを拭く男。東北の山村のくさ原を風が駆け抜け、海のように波打つ中を駆け抜ける自転車など、意外と豊かな日本的景観の中でシュールな画を描きながら進む展開は、これまでの邦画にはなかったタイプのアートなロードムービーを創りあげていく。細々としたドラマが、カーブミラーを拭く皆川さんの生き様という主題に絡んでこざかしく展開するが、ロードを続ける皆川さんにはノイズでしかない。退職金すら捨て、皆川さんはミラーを磨き続ける。悠然と流れる時間の中で、ただ、ミラーを磨く。そういう映画である。
正直、描き切れていない部分も多々あるものの、こうした監督の意図は充分読める。もう少し丁寧な絵作りと、どうでもいい部分である各ドラマの「どうでもいい」ことの演出ができていたら、言葉ではいいようのない香りのする映画になったような気がして残念だ。カーブミラー磨きが、日常のあれこれより、どのようにどうでもよくないか、という哲学がもう少しだけ必要なのかもしれない。
皆川勤さん(60)ミラー拭きで全国制覇
映画「ミラーを拭く男」(梶田征則監督)から。
好きな俳優の1人だった緒形拳さん主演作品だが、
彼の台詞は、全編を通して、ほとんどない。(汗)
あまりに少な過ぎて、主人公のキャラクターが掴めないまま、
物語は進んでしまうのだが・・その中から、気になる一言。
定年間際で起こしてしまった交通事故がきっかけで、
全国のカーブミラーを拭いてまわりはじめた主人公に対し、
その動機は曖昧なまま、マスコミがニュースで取り上げ、
一気に「時の人」となってしまった。
テレビに映し出された彼の映像に付けられたテロップが
「皆川勤さん(60)ミラー拭きで全国制覇」(まだ、していないのに)
車ではなく自転車だから、余計に脚色されてしまい、
実は、彼の本意は、最後までわからずじまいである。
まだ始めたばかりの不可解な動きに、マスコミは異常に反応し、
面白可笑しく取り上げてしまう。
「どうして、全国のカーブミラーを拭こうと思ったのですか?」
この問いは、一度も耳にすることがなかったと思う。
だからこそ、この作品の評価が難しい。
人の行動に、何か意味を付けたがるのは、
人間をあまり理解していない、私たちの悪い癖かもしれない。
「特に、なにも考えてません」・・が本音だったりして。(笑)
それはそれでいいような気がする。
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