劇場公開日 2004年4月17日

「監督の演出力には説明しにくい何か独特の力があるのです 思いつくのは映像のテンポに独特の味があることです」リアリズムの宿 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5監督の演出力には説明しにくい何か独特の力があるのです 思いつくのは映像のテンポに独特の味があることです

2023年2月13日
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鑑賞方法:VOD

ドラマはありません
あるような無いような
結局はなにもない

ただただ山陰鳥取辺りの田舎を金の無い男二人が旅するだけなのです

敦子の登場がなければ丸ごとなにもない映画です
その淳子もそれが何のドラマであるのか、意味があるのか希薄なのです

一本の映画に仕上げられるドラマ的な中身がまるでないのです

クライマックスが、ひどい安宿で笑うしかないというシーンであるほどです

それなのに、それが83分の映画として成立しているのです

コメディではありません
だからギャグもありません
普通におこる物事のおかしみだけがあるだけなのです
原作のとおり「リアリズム」なのです

それでおもしろい映画と言えるのでしょうか?
つまらなくないのだろうか?

それなのに観終わると何か意味があったように思えてくる不思議さ

監督の演出力には説明しにくい何か独特の力があるのです
思いつくのは映像のテンポに独特の味があることです
一つ一つのカットが長いのです
かといって長回しと言うほどでもない
それでもかなり長いのです
それが恐るべき粘り気をもって積み重ねられているのです
それが独特の間の味わいを作り出しているのだと思います
簡単なようで恐るべき胆力がないとまず撮れないと思います

山下敦弘監督は本作公開時わずかに28歳

リンダ リンダ リンダ
天然コケッコー
味園ユニバース

その後の傑作の数々がその才能を証明しています

2023年現在46歳
まだまだ傑作を送り出されることと思います
楽しみです

あき240