劇場公開日 1984年3月17日

「魔天降臨」映画ドラえもん のび太の魔界大冒険 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0魔天降臨

2024年10月24日
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現実世界での己の無能ぶりに辟易したのび太はあるときふと思いつく。「この世界が科学じゃなくて魔法の世界だったらボクでも活躍できるんじゃね?」苦々しい表情のドラえもんをよそに、のび太はもしもボックスで世界を書き換えてしまう。

魔法の世界では箒が空を舞い、科学が迷信として扱われていた。さながら酉島伝法『るん(笑)』のごとし。

しかし案の定、魔法の世界になったところでのび太の無能ぶりは変わらない。チンカラホイと唱えてみてもチョーク一つ満足に動かせないのび太はクラス中の笑い者にされる。

とまあここまではテレビアニメ版によくある「スゴい道具を使ったものののび太の基礎能力の低さゆえに現状が何も変わらない」というコメディチックな物語が展開されていくのだが、中盤から雲行きが怪しくなる。

魔法使いの権威、満月博士によると、地球には今危機が迫っている。何でも、悪魔が棲まう魔界星と呼ばれる邪悪な天体がものすごいスピードで地球に接近しているのだという。まさに魔天降臨。そうなれば地球はおしまいだ。

こいつはさすがに手に負えないと思ったのび太はもしもボックスを使って世界を元に戻そうとする。しかし自室を片付けないのび太に業を煮やしたのび太のママはもしもボックスを焼却してしまっていた。

というわけで魔天降臨を阻止すべく、ドラえもん一行は悪魔の力で猫に変えられてしまった満月博士の娘・美夜子と共に魔界星へ出向く。

いっときは奮戦するものの、魔界勢力の前に少しずつ戦力を削がれていく一行。遂にはドラえもんとのび太を残すのみとなってしまった。二人はタイムマシンで過去に戻り、もしもボックスを使おうとするのび太を止めればいいことに思い至る。

タイムマシンで過去に戻った二人だが、悪魔の手先・メデューサが彼らを追う。時空すら跨ぐメデューサの執念深さがトラウマとなっている方も多いんじゃないかと思う。結局二人は過去世界でメデューサによって石に変えられてしまい、計画は頓挫する。

このまま世界は終わってしまうのか。絶体絶命のピンチに現れたのはドラミだった。ドラミは二人の石化を解除し、自身のもしもボックスで世界を元に戻すよう促す。これにて一件落着…と「おしまい」の表示が画面に浮かぶがのび太が「ちょっと待った!」と一言。

ここでもしもボックスを使えば、二人は助かるものの、パラレルワールドとして切り離された魔法世界はそのまま崩壊を迎えてしまう。それじゃダメだ、とのび太は再び魔法世界へ行くことを決意する。

この辺の倫理意識はかなり先進的だといえる。昨今氾濫しているタイムリープもの、パラレルワールドものもぜひ本作ののび太のマインドを見習ってほしいものだ。

魔界星のボス・デマオンとの最終決戦に臨むドラえもん一行。満月博士はデマオンの弱点がデモン座のa星であることを見抜く。最後はジャイアンの投擲したダーツをビッグライトで巨大化させ、心臓型のa星を思い切り貫く。絵面がメチャクチャいいんですよね、ここ。

ドラえもん映画の中でも屈指のダークさを誇る異色作だった。

因果