「細部に光るリアリティ」ユンカース・カム・ヒア ヨックモックさんの映画レビュー(感想・評価)
細部に光るリアリティ
ファミリー向けのファンタジー家族もの。
にしては、ドラえもんやクレヨンしんちゃんの名作どころと比べて話が冗長で芯がない。
しかしながら細部にこだわったリアリティ溢れる描写が素晴らしい。
例えば主人公のランドセルの金具や中身の教科書が揺れる音、お盆の上のカップの水が地面と水平に揺れるところ、狭い駐車場に車を前後にしながら入れるところ。そういった細かな描写が、何の説明もなく喋る犬が登場するありえないおとぎ話の世界観を、視聴者が素直に共感できる現実世界へと繋いでくれているのだと思う。
時代を反映した家族問題の取り上げ方が面白い。当時は共働きも珍しかったのだろう。現在では当たり前になりすぎて陳腐化したキャリアウーマンと鍵っ子の諸問題がシリアスに描写されているのがなんとも古臭く少しばかり滑稽に思える。
主人公の娘はストレスを溜め込む“良い子”という、これまた今になって見ればよくありがちな設定のキャラクターだがあまりに達観しすぎていてなかなか共感する子ができない。とはいえ、ラストシーンで「両親とも仲良くならなくていいから、今のままでいて欲しい」と泣くシーンは、これまた大人が作った美談っぽい名言のそれではなく、子供のがひねり出した語彙力の中での切なるいじらしい願いが感じられて、胸にくるものがあった。
特になんの説明もなく日本語を話すユンカースが、何の前触れもフリもなく「奇跡3つ起こすぞ!」とかほざきだすのはいくらなんでも強引すぎないか。ファンタジーの設定すべてにいちいち説明を求めるほど野暮ではないが、それでももうちょっと何か匂わせるバックグラウンドがあっても良かったのではなかろうか。死んだおばあちゃん絡みとかでさ。
家政婦さんキモいけど愛嬌あってかわいい。