幸福の鐘のレビュー・感想・評価
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この道はいつか来た道
工場閉鎖に伴い失職した男・五十嵐。運の無さを象徴するかのような雰囲気を醸し出していた彼がまず出会ったのが死ぬ間際のヤクザ。犯人と間違われ逮捕され、そこで知り合った囚人に彼の妻の浮気話を聞いてしまう・・・。そこからは運、不運が交互に訪れ、善行、悪行どちらとも言えぬ行動により幸せって何だっけ?みたいな考えが重くのしかかる。
疾走感溢れる映画作りが巧いSABU監督。序盤からは緩い展開のように思えるのですが、寺島進演ずる五十嵐が怒濤の人生を短い期間の間に走馬灯のように描いていた。滅多にないことが次々と彼に襲いかかり、まるで人生の浮き沈みを短時間に経験してしまったかのようだった。
なにしろ車に撥ねられ入院した直後に宝くじの高額当選金(2500万か?)を受け取り、さすがに善行による因果かとも思いつつ、他人の生死をも数々目撃してしまうのだ。鈴木清順演ずる老人の「一人じゃ幸せになれない」という言葉も彼に影響を与えたのだ。大金を手にしても幸福感なんてない。むしろ罪の意識に苛まれつつも、結果的には人の卑しさをも目撃し、些細な金のトラブルにも遭遇する。
最後まで寡黙な男を演じていたが、結末を見てなるほど!と思わせる脚本テクニック。平凡な日常を家族と過ごすことがどれだけ幸せなことなのか。冗談のような展開も彼の人生を大きく変えることとなるのだろう。「この道」の鐘の音。家に帰りたくなる旋律に安堵する作品でもありました。
喋らなくてもなんとかなる
2003年の作品
今から18年前の作品
それからDVDレンタルされそれ以来3度目の鑑賞
当時は寺島進が40歳くらいで篠原涼子も西田尚美も30歳くらい
年月が経つのは早い
SABU監督作品大好き
SABU監督の代表作のひとつ
シンプルだけど深味がある
いわゆるロードムービー
主演の寺島進が演じる勤め先の工場が閉鎖になり職を失った五十嵐悟は自宅に帰るまで一切喋らない
高倉健に憧れているのかもしれないが実際高倉健はよく喋る人だったし一流の役者なので不器用でない
まわりが一方的に喋り主人公は黙って聞いている
路線バスに乗り工場を離れる
特にあてもなく成り行きでとぼとぼと歩くなかで色々な人と出会う
塩見三省演じるヤクザが目の前で死んでお巡りに誤認逮捕され留置所に
板尾創路演じる妻の浮気相手を殺した殺人犯の愚痴を聞く
疑いが晴れ釈放された悟は殺人犯の妻が働くスナックに向かい別の浮気相手を懲らしめる
火災から逃げ遅れた篠原涼子演じる千鶴子の子どもを救出し今度は警察から表彰状を貰う
殺人犯に会いに面会室に行くがそこでも悟は一切喋らない
車に轢かれ入院
鈴木清順演じる爺さんの遺言に従い婆さんの家を訪れると婆さんは宝くじが当たったショックか死んでいた
しょうがないので銀行で当選金をもらう
桟橋で再会した千鶴子に当選金が入った手提げ袋を盗まれる
益岡徹演じる男が川に飛び込み自殺を図るところに遭遇
飲み屋で手塚とおる演じるカネを払おうとしない客と田山涼成演じる代わりにカネを払うと言い出す男のやりとりを観察
なんやかんやで歩いて来た道を戻る
千鶴子は高級レストランでランチ
バスを降り工場の前から突然走り出す
悟の嫁役の西田尚美の「おかえり」の一言に自分もほっこり
そこでやっと声を出す悟
自宅で嫁とはよく喋る悟
これまでの経緯を話す悟だが嫁は笑って信じようとしない
暖かい家庭である
自分も西田尚美に「おかえり」と言われたい
隠れた名作
もっと多くの人に観てもらいたい
喋らない演技は難しい
世の中には日本の役者の8割は下手くそだと世迷言を書き込む馬鹿が存在するが少数派だと自覚しているだけデーブスペクターと違ってまだ救いようがある
貴様の思想に百歩譲って従えば寺島進は2割の方の役者になる
それにしても悟の周りで事件がよく起こる
その点だけなら江戸川コナンのような存在
寺島進、ナイスRUN
寺島の全力疾走見れただけでもう満足。
やっぱりSABUの映画はこれがないと。
全力で走ってるとがむしゃらに生きてる感じがしていい。
それも大の大人が。
終了5分前まで一切言葉を発しない寺島。
急に話しだすとかなり普通。
それまでのイメージとはだいぶ違った。
もっと暗い大人しい男だと思ってた。
結局お金じゃないってのはよくある話で。
そこまでの持っていき方、見つけ方を楽しむ映画。
寺島演じる男の気持ちや性格はよく分かる。
困っている人をほっとけない気持ちや、間違った事を許せない気持ち。
そしてお人好しなとこなど、なんか気持ちは分かるなと思った。
本当の幸せを見つけてからの真っ直ぐ堂々と生き生きとした寺島、良かったなぁ。
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