「演出が原作の味を生かせてない」海がきこえる 島田庵さんの映画レビュー(感想・評価)
演出が原作の味を生かせてない
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ひとことで言うと、演出がダメ。
とくに女性の声が軒並み甲高く平板な一本調子で、
ニュアンスなんてあったもんじゃない。
だから、
ヒロイン武藤里伽子(むとうりかこ)の危うい魅力が全然伝わらない。
里伽子の声だけでなく、主人公・杜崎拓(もりさきたく)の母親の声も、
原作で「悟りきったように言った」とか「優しい口ぶりだった」とあるところまで
甲高い声の一本調子であるところを見ると、
これは演技の問題ではなく、演出の問題だと言い切っていいだろう。
おまけに、
大事な台詞につまらんBGMをかぶせて引き立たなくしたりしてるし。
それから、
台詞はだいたい原作を踏襲しているものの、
肝心なところによけいなステレオタイプを持ち込んだがために
ありきたりな展開になっちゃってるところがあって残念。
とくに最初と最後。
吉祥寺駅でばったり再会、なんていうご都合主義は、原作にはない。
特殊な因縁で結ばれてた、なんて話じゃないんだから。
しかも、
大学に入った時点で里伽子の家庭の問題は何も解決しておらず、
修羅場はこれからなのである。
それを、都合よく安っぽくまとめてしまった。
あと、映画では、
高校3年生がGWに男女で東京へ行ったことが学校にバレてなくって、
だから親子で呼び出しを食らうこともなく、
それゆえ拓の母親と里伽子の母親が呼び出された学校で会うこともなく
(原作では母2人が、いきり立つ教師の毒気を抜くんである)
同級生の噂話だけで終わったというのも、なんかつまらん。
とにかく全体的に、
原作から出汁の旨みを抜いて
砂糖をまぶしちゃった感。
原作が面白いだけに、残念至極。
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