「これは面白い!最後までワクワクして観れます」ギターを持った渡り鳥 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
これは面白い!最後までワクワクして観れます
大スターには、それぞれこれを観てなければ話にならないというような作品なりシリーズがあります
勝新太郎なら座頭市という風に
小林旭ならもちろん本作です
なる程、本作を入れて9作もシリーズになる面白さです
主人公はタイトル通りのギターの流しで放浪する若者です
その過去の正体は中盤で明らかになります
舞台は港町函館
冒頭は大沼国立公園の付近
雄大な駒ヶ岳の山容から始まって、タイトルバックの最後の監督のところで函館山からの函館の100万ドルの夜景を観せてくれます
お話も面白く最後まで退屈しません
大ヒットした「南国土佐を後にして」の僅か2ヵ月後の公開です
地方ロケもいれて、あっという間にこれだけのクォリティーの作品を作れる当時の日本の映画産業の凄いこと!呆れる程です
しかも企画構想からシリーズ化できるように出来ているのですから凄い
大ヒットした前作の浅丘ルリ子とのコンビは当然です
悪役の好敵手に宍戸錠を配して強化が図られているのが大成功しています
これによって中盤以降の盛り上がりが素晴らしい展開になっています
本作で目を惹くのは美術と衣装のレベルの高さ
函館のクラブやバーの内装は、お洒落で貧乏臭くなく、三周くらい回って現代的ですらあります
こんなお店が恵比寿辺りに在りそうです
また浅丘ルリ子がお屋敷で弾いているピアノには、RUBINSTEINのブランド銘があります
函館に因んだ珍しいロシア製ピアノです
ここまで美術は頑張っています
カメラはそれを解るかい?という風に写すのです
小林旭の襟の大きな革ジャンと白いTシャツやスーツ姿も格好良いですが、本作では浅丘ルリ子の衣装が特に良いです
初登場の際のモーターボートと突堤のシーンでの、グレーのパンツにエンブレム付きの紺ブレザー、インナーに白いクルーネックのセーター、頭には白地に大きな水玉のスカーフの出で立ち
この垢抜けていること!お洒落なこと!
1959年、昭和34年なんですよ、これ!
髪も栗色です
今では当たり前のヘアカラーですが、当時は誰もそんな人いなかったはずです
一般女性がこのようなヘアカラーをしても普通になったのは90年代も半ばくらいからでは無かったでしょうか
お誕生日パーティーの時の青いサテンのドレスも素敵です
ウルトラマリンブルー色のサッシュのベルトがアクセントになっています
ラストシーンのモフモフした柔らかそうなピンクのジャケットもフェミニンで、このシーンにとてもマッチしています
衣装の頑張りは評価すべきです
ギターを持った渡り鳥というコンセプトがまず良いです
イマジネーションが広がります
アメリカの有名黒人歌手のBobby Womack が1974年にリリースした Lookin' For A Love Again というアルバムのジャケット写真がまさにこれです
まさか本作とは関係あるわけ無いですが、この雰囲気ですよ!
イマジネーションが広がるんです